女性技術者が学び、交流し、働き方を考える場を提供する――日本女性技術者フォーラム 金田千穂子氏

女性技術者の「数」が増えることは重要

金田氏は富士通研究所の専任研究員。入社以来、一貫してシミュレーションの研究に従事している

金田氏は富士通研究所の専任研究員。入社以来、一貫してシミュレーションの研究に従事している

では、どうすれば女性技術者の活用がもっと加速するのか。

制度の整備はもちろんのこと、企業や企業内の個人、そして女性自身の意識が変わることも必要だ。そのために重要なこととして、金田氏は「数」を挙げる。「例えば、職場が妻に家事や子育てを任せっきりにしている男性ばかりで、女性の数が少ないと、彼女たちが仕事、家事、子育てなどの生活時間をどうやりくりしているのか、想像がつかない人も多いと思います。 女性技術者という集団が大きくなれば、周りの男性の意識も変化するのではないでしょうか」と分析する。女性技術者にとっても、目指す姿や、時間のやりくりなどをイメージしやすくなる。

自由度の高い時間の使い方は、男性も働きやすい

企業の姿勢に目を転じると、多くの企業が女性を活用しようとしている一方で、その企業の制度が必ずしもマッチしているとは言えない状況もある。「在宅勤務やフレックスなど、もっと時間に縛られない働き方ができれば、女性だけでなく、介護などのいろいろな事情を抱えている男性も働きやすいはず。ただ、人事面の管理が難しいと企業側は考えがちなので、なかなか進まないことが多いのではないでしょうか」と金田氏は指摘する。企業側にも、もう一歩踏み込んだチャレンジをしてほしいところだ。

女性技術者の活用を推進するには、各企業の制度や取り組み、技術分野では多数派である男性の意識、また女性技術者自身の意識など、いくつもの要素が互いに刺激し合い、連携しながら、全体的に底上げしていく取り組みが必要と言えそうだ。

ライフイベントへの対応は人ごとではない

金田氏は、提言などによる社会への働きかけにも関心を持つ。「これまでは女性自身の学びや能力開発に力を入れて活動してきたが、自助努力だけではどうにもならないこともあります。特に、企業の中で頑張ってきたベテランの女性技術者が、置き去りにされていることも少なくない。それぞれの企業の考えもあり、とても難しい部分ですが、何らかの形で働き掛けたいと考えています」。

仕事か生活かのどちらかを選ぶのではなく、どちらも充実させたいというのは、男女を問わず願うことだ。金田氏は、「例えば、子育て中の女性を特別視したり、過剰に気を使ったりするのではなく、チャンスを与えてほしい。同時に、大変な時には声を上げられるような環境を作ってほしい」と言う。結婚、子育て、介護などのライフイベントにどう対応するのか。これは人ごとではなく、自分の問題でもあるのだ。

諦めてしまう? それとも……

今年2月に開催された「第6回メンタリングサロン」のテーマは、「できないと思っていませんか」。意識変革やチャレンジの壁は、こんなところにあるのかもしれない。同サロンの開催案内には、こう書かれていた。

やりたいけどもう遅い、やりたいけど今の会社では無理だろう、やりたいけど今の状況ではむずかしい。そんな風に思って「できない」と判断していることはありませんか。(中略)諦めていたことを見つめ直し、解決策を見つけて実践するためのモチベーションについて考えてみましょう。まずは「できない」という思い込みを「できる」にかえてみませんか。

徐々にではあるが、女性技術者を取り巻く環境は改善してきている。意欲も探究心も向上心もあるのに、諦めてしまったら、本人にも企業にも、ひいては日本の社会にとっても、もったいない。JWEFは、学びや自己啓発を通じて、女性技術者を応援し続けている。

日本女性技術者フォーラム (The Japan Women Engineers Forum : JWEF)

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