業界初のドア開閉機構を開発。目標は「高齢者関連なら船渡に聞け」――大建工業 船渡まなみ氏

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介護をする人、受ける人、双方にとって優しい環境――それは介護を受ける人の“心の負担”をも軽減する。大建工業 住空間事業部 住機開発課の船渡まなみさんは、車いす利用者など介護を必要とする人の「トイレに行きたいけれど、迷惑を掛けたくない」という気持ちを和らげるために、引き戸と開き戸を融合させた業界初のドアを開発したエンジニア。「建築は好き。でも数学や物理は苦手」という意外な一面を持つ船渡さんは、福祉用具や福祉住環境も学び“潜在的な困りごと”に目を向け、今日も仕事と向き合っている。(執筆:杉本恭子、撮影:水戸秀一)

ドアや手すりの商品企画から発売まで

――船渡さんが所属している「住機開発課」では、どのような製品を開発しているのですか。

住機開発課は、市場別・顧客別の製品開発を行う部署です。ハウスメーカー向け製品や、高齢者市場向け、幼稚園・保育園向けといった特定の市場を想定した建材を開発しています。

私はドアや収納、手すり、造作材(巾木・窓枠)などを担当しています。商品の企画から設計、品質検証をはじめ、特許出願、説明書の制作、カタログ校正など、発売に至るまでの業務を他部署や社外の方と協力しながら、手掛けています。

現在は主に手すりの開発をしていますが、機能としてはシンプルな手すりも材質、形状や取り付ける場所など、使用目的や利用者の体格などによって改良できることはたくさんあります。

過去に私が携わった手すり製品では、和室にベッドを置くケースを想定し、畳に固定できる仕組みを開発しました。当社は畳も販売しているので、大建ならではの製品なのではないかと思います。

――入社5年目だそうですが、これまでに携わった中で、代表する製品は。

2014年6月に発売した「ひきドア」ですね。TOTO株式会社様と共同で、車いすの利用や介助を想定したトイレ用のドアを開発しました。

3枚の引き戸をそのまま開き戸として外側に180度開けることができます。大開口を確保できることが最大の特徴で、業界初の開閉機構です。普段は通常の引き戸として使用できますし、すべて開ければ0.5坪以下のトイレでも、車いすのまま乗り入れることができて、介助もしやすくなります。

2011年に企画が持ち上がり、まず扉の機構を検討することから始まり、いくつものアイデアの中から今の形状に決まりました。

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3枚の引き戸を開けると、そのまま開き戸として外側に180度開けることができる。通常は引き戸だけで使用できる。

ドアが故障した!?

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最初の仕事は高齢者施設向け製品「おもいやりシリーズ」の立上げ。「思い返せば先輩の足を引っ張ってばかりだった」

――ひきドアの開発ではどのような点で苦労しましたか。

ひきドアは新規要素の多い製品だったため、発表前のかなり早い段階から展示会に参考出展し、お客様に使っていただきました。私も会場で、操作性や機能に関するご要望を直接聞きました。

ひきドアの機構はとても難しく、まず引き戸としては、まっすぐスムーズに引けなければなりません。そして開き戸としては、3枚の引き戸がずれたりガタついたりすることなく、軽く開けられなければなりません。ドアの動きや耐久性、施工性など、設計面の課題をクリアしていくのが大変で、試作と検証を繰り返しました。

また、製品の梱包形態や施工説明書の内容なども、社内外の方から意見をいただきました。製品のネーミングやロゴもなかなか決まらず、かなり難航したのを覚えています。

――特に記憶に残っている出来事はありますか。

展示会に間に合わせるために試作品を作って、会場でお客様に触っていただいていたら、ドアが故障してしまったことがありました。故障したひきドアは、その展示会で再び展示することができませんでした。

原因は引き戸3枚をロックするタイミングや速さの問題で、ちゃんとロックできなかったことでした。約1カ月後の別の展示会では不具合のあった箇所を改良し、し、万が一に備えて予備も用意して挽回しましたが、この事件は今でも社内でよく話題にされます。

私たち作り手は、どういう使い方をすれば、うまく動作するか分かったうえで扱いますが、お客様はそうではありません。仕組みをおもしろがって、ガチャガチャと動かしたりする方もいます。どのような使用状態が考えられるか、洗い出すことの重要性を再認識した出来事でもありました。

⇒次ページ: 建築専攻。でも数学や物理は苦手

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