髪の毛の100分の1の薄さ。巻いて持ち運べる第3世代太陽電池を開発

人間の髪の毛と比べて100分の1という薄さの柔軟な太陽電池を、米ケネソー州立大学サザンポリテクニック工学・技術工学部の研究チームが開発した。

同チームは、さまざまなナノ材料を研究。より安価で高効率の第3世代太陽電池の開発を目指している。

「この新技術は非常に大きな可能性を秘めている。例えば、柔軟な太陽電池をウェアラブルエレクトロニクス、バックパック、自動充電式携帯電話に組み込むことや、太陽電池フィルムを高層ビルの窓に設置することも可能になる」と、チームの研究助手を務める学部生のDavid Danilchuk氏は語る。

また、電気工学科のSandip Das准教授は「実際、このような柔軟なソーラーパネルは破滅的な暴風雨に見舞われたときに非常に有用だ。災害救助員はロール式ソーラーパネルを持ち運び、現場で携帯電源として使用することができる」と説明。商用ビルの開発業者も、高層ビルの窓に透明なソーラーパネルを設置して太陽光発電できるようになるかもしれないと注目しているという。

同チームは特殊な作成法で、ナノ構造の多層膜を持つ太陽電池を作成することに成功した。「われわれが開発した作成法を用いると、プラスチック基板上に薄い太陽電池を生成できて、柔軟な太陽電池が製作可能になる。これは、現在のソーラー技術において最先端のアイデアのひとつだ」と、電気工学科の学生で同チームのメンバー、Baker Nour氏は話している。

Das准教授によると、現在の商用ソーラーパネルは第1世代のシリコン太陽電池を使用している。第1世代のシリコン太陽電池は高価で壊れやすく、かさばるので携帯性の面で問題点が多い。

次世代の太陽電池にとって最も有望な材料系は、同チームが作成している超薄型のハイブリッドペロブスカイト非晶質薄膜(参考記事:2次元ペロブスカイト型太陽電池の電力変換効率を3倍以上に――米研究チームが結晶成長法を改善)。高価なシリコンを使用せずに、窓ガラスや飲料用ビンと同じ安価なガラス基板上で太陽電池を作成できる。

同チームは、高価な材料、億単位の装置、研究用と同じ高級なクリーンルームを使用せずに、柔軟なプラスチックや金属箔の上に太陽電池を生成できる方法を探求している。

「過去20年間、世界的に多大な研究活動が続けられてきたものの、シリコン太陽電池の効率はあまり向上していない。効率の高い太陽電池を低コストで作成するため、新たな技術が必要だ。私たちのチームが研究しているバンドギャップを制御した新たなペロブスカイト結晶は、シリコン電池と比べて200分の1ほどという薄い膜によって、シリコンよりも広範囲の太陽光スペクトルを吸収できる。第3世代の太陽電池として期待されるペロブスカイトは、電子産業用シリコンよりも安価だ」と、Das准教授は述べている。

材料費と製造コストの削減は、全体的な発電コストの大幅な削減につながる。最終的には消費者の負担を軽減できる。「私たちの長期目標は、1W当たりの電力コストを10セント以下に抑えることだ」と、Das准教授。現在、アメリカにおけるシリコン太陽電池による電力コストは1W当たり約30セントであり、「研究者が発電用のスペースをより効率的に使用できる技術を開発し、太陽電池がより安価になれば、太陽光発電は2040年までに一般に普及するだろう」と、Das准教授は予想している。

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ENGINEERING RESEARCHERS STRIVE TO CREATE CHEAPER, MORE EFFICIENT THIRD-GENERATION SOLAR CELLS

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