理研、天然シリコンの半導体ナノデバイスにて量子ビットを実現

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理化学研究所は2016年8月22日、天然シリコンを用いた半導体ナノデバイスにおいて、量子計算に必要な高い精度を持つ「量子ビット」を実現したと発表した。

量子コンピュータの情報の最小単位、量子ビットは0と1だけでなく、それらの中間の“重ね合わせ状態”を取れる。従来のコンピュータに比べて高速に計算できるのはこのためだが、量子ビットの重ね合わせ状態は、母材となるシリコン中の核スピンからの“雑音”に弱い。この雑音の影響を受けると、量子ビットのコヒーレンス時間は1マイクロ秒程度に短くなる。

高精度な量子ビット操作を行うためには、コヒーレンス時間よりも十分短い時間で操作を終える必要がある。しかし従来の量子ビット操作方法では、操作速度(ビット反転に必要な時間)が数マイクロ秒と遅いため、天然のシリコンにおいて高精度な量子ビット操作を行えない。

そのため、量子コンピュータを構成するのに十分な性能を持つ量子ビットはこれまで、超電導回路や同位体制御されたシリコンなど、“雑音の少ない材料”でしか実現できていなかった。

そこで理研の研究グループは、天然のシリコン上に作製した半導体量子ドットに電子を閉じ込め、マイクロ波電圧をかけて電子スピン共鳴を起こすことで、量子ビットの操作速度を短縮することにした。

今回の研究では、天然のシリコンであるSi/SiGeヘテロ構造基板中の二次元電子気体を表面ゲート電極によって閉じ込め、2つの電子を含む量子ドットを作製。量子ドット直上には絶縁膜を挟んで、量子ビット操作に必要な傾斜磁場(位置によって大きさが異なる磁場)を形成する微小磁石を配置した。

作製した量子ドットのゲート電極にマイクロ波電圧をかけると、量子ドットに閉じ込められた電子の位置が波長1m~100マイクロメートルのマイクロ波によって変調される。電子の位置の変調は、微小磁石の傾斜磁場によって実効的な磁場変調に変換されるため、この方法で単一量子ビット操作に相当する電子スピン共鳴(電子スピンの向きの変化)を起こすことができる。

量子ドットのゲート電極に電子スピン共鳴条件を満たす周波数のマイクロ波電圧をかけたとき、量子ビット操作速度は0.05マイクロ秒程度と従来の100倍に高速化する。これにより、量子ビットの重ね合わせ状態が雑音の影響を受ける前に、量子ビットの操作を終えることが可能になった。

なお、量子ビット操作の忠実度を検証したところ、平均99.6%の忠実度、また基本的な全ての単一量子ビット操作について99%以上の忠実度が得られたとしている。

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