頭髪の1万分の1のナノニードルでCO2還元を効率化――排煙から燃料ができるように?

photo: Marit Mitchell

トロント大学工学部の研究者チームは、地球温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)を、メタノールやエタノール、ディーゼルといった燃料の有用な原料である一酸化炭素(CO)に効率的に還元する方法を開発した。研究の詳細は、『Nature』誌に8月3日オンライン公開されている。

排出するCO2を新しいエネルギーに再生するというと、まるでSFのように聞こえるが、同チームは長い間、温室効果ガスを燃料や他の有用な化学物質に変換できる簡単な方法を探索してきた。

「CO2の還元は、その分子が不活性であるために非常に難しい課題だ」と同チームのリウ博士が述べると、「世界的に高まるエネルギー需要に対応するとともに、環境保護にも役立つ、どちらにもベストな方法を探していた。産業による排煙もしくは大気からCO2を取り込み、燃料製造の原料として使えば、グリーンエネルギーの長期貯蔵を提供することになり、一石二鳥だ」と同チームのパン博士は説明している。

同チームが考え出したCO2の還元方法は、まず先端が人間の髪の毛1本の1万分の1の小ささの極めて鋭い金の針、ナノニードルを作る。

「このナノニードルが、触媒反応を起こす避雷針のような働きをする」と、リウ博士。小さな電位差をナノニードルの配列に加えると、ニードルの鋭い先端に高電場が生じる。これにより、CO2が引き付けられ、これまで報告されているどの触媒よりも早い速度でCOへの還元を加速する。

従来のやり方よりも格段にCO2還元の効率が向上することから、ビジネスとして成立する可能性も出てきたという。同チームは現在、次のステップに進み、COを生成する過程を省き、直接、多くの燃料を作る研究をしている。

「エネルギー貯蔵のための水の電気分解の分野は急速に進歩している。再生可能エネルギーによる電気を利用したCO2の還元効率の向上についてもブレークスルー技術が求められている」と、この分野の第一人者であるスイス連邦工科大学ローザンヌ校のマイケル・グレッツェル教授は述べている。「トロント大学によるブレークスルーは、電場により誘起される触媒効果の集中作用という新しい概念に基づいて達成された」

「世界的なエネルギー問題の解決には、多くの分野の領域を越えた解決策が必要」と、研究チームを率いるサージェント教授は述べる。「この研究は、単に長年にわたるCO2の還元問題に対する新たな解決策を提供するだけではなく、太陽や風などの新しいエネルギーの貯蔵の可能性も広げるものだ」

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