キャノン、InPイマージョン回折素子を開発 高い回折効率、分光器を小型化

キャノンは2016年10月18日、InP(リン化インジウム)のイマージョン回折素子の開発に成功したと発表した。世界初という。

イマージョン回折素子は階段状の分光素子だが、1~20μmの赤外波長を透過する材料は半導体材料であるために非常にもろい。このため、高い規則性と数ナノメートルレベルでの凸凹の平面を持つ素子を実用可能なサイズで作製するのは困難であるとされてきた。

同社は、精密部品製造で培った独自の超精密加工技術を用いることにより、半導体材料のもろい性質でもイマージョン回折素子を開発することに成功した。このInPイマージョン回折素子は、47μmの間隔で990段の格子を持つ。

一般的な高分散の赤外線分光に使用される分光素子は絶対回折効率が50~60%程度だが、この回析素子では約75%を実現。集光量が少なくても効率良く光を捉えることができ、小型化しても高精度の測定ができる。

分光器は人工衛星や天体望遠鏡などによる宇宙観測において、光を波長ごとに分ける役割を担っている。イマージョン回折素子は、一般的な反射型に比べて分光器の小型化や高性能化を可能にする分光用デバイスだ。

今回開発したInPイマージョン回折素子は、同波長をカバーする一般的な反射型素子を搭載した分光器に比べて約1/27小型化することが可能だという。これにより従来は大きさなどの制約で難しかった高性能分光器を人工衛星に搭載したり、次世代の地上大型望遠鏡などに適用して小型化するなどの応用が期待される。

すでに開発済のGe(ゲルマニウム)、CdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛)と合わせて今回のInPイマージョン回折素子により、近赤外線から遠赤外線までの天文分野における赤外波長(1~20μm)ほぼすべての領域の分光をカバーできるようになる。

今後は、より可視光に近い波長に対応した材料によるイマージョン回折素子の開発を予定しているという。さまざまな材料のイマージョン回折素子を揃えることで波長領域の選択肢を広げ、天文分野を始め、科学や医療、通信分野などへの活用を見込む。

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