産総研、不揮発性磁気メモリのためのMRAM高性能参照層を開発 スペーサー層にイリジウムを採用

産業技術総合研究所(産総研)は2017年2月27日、次世代の不揮発性メモリである磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の参照層に、イリジウムを用いたスペーサー層を用いて、大容量MRAMに求められる性能を達成したと発表した。

MRAMには、磁界書き込み型MRAM、電流書き込み型 MRAM(STT-MRAM)、電圧書き込み型 MRAM(電圧トルクMRAM)の3種類がある。なかでも、垂直磁化TMR素子ベースのSTT-MRAMは、ギガビット級の大容量化が可能だ。このため、半導体メモリ(DRAM)を凌駕する大容量メインメモリとしての応用が期待できる。

産総研は現在、DRAM代替向け超大容量STT-MRAMの開発を進めている。このSTT-MRAMの実現には直径20nm以下のTMR素子が不可欠だが、TMR素子が小さくなるほど、その参照層は強固さを失う。そこで、今回の研究では参照層の強固さを向上することに取り組んだ。

TMR素子の参照層は、上部強磁性体層と下部強磁性体層に加え、その2層の間にあるスペーサー層で構成される。スペーサー層は0.5nm程度と極めて薄い。このような3層構造では、上下の強磁性層の磁化方向が逆向き(反平行)の磁化配置の状態で強固に結合(反平行結合)する。この反平行結合が強いと、参照層は強固になる。

産総研は結合強さ(Jex)を大きくするために、スペーサー層の材料に従来のルテニウムではなくイリジウムを採用した。その結果、Jexの最大値を従来の2.2erg/cm2から約20%増加させ、2.6erg/cm2に向上できた。また、TMR素子直径20nm以下のサイズのMRAMに必要とされるJex1.8erg/cm2以上を示すスペーサーの厚さの範囲は、従来のルテニウムでは0.38~0.48 nm(0.1nm)だったが、イリジウムでは、0.38~0.57nm(0.19nm)と、約2倍に広がった。

産総研によると、要求されるJexを達成できるスペーサー層厚さの範囲が約2倍に広がったことは、大容量MRAMの製造が容易になったことを示しているという。強固な参照層を与えるイリジウムのスペーサー層は、大容量MRAMに現在標準的に用いられているルテニウムを一新するとともに、MRAMの大量生産に貢献することが期待できるとしている。

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