-200℃で高温超電導を示す超薄型フィルムを独大学が開発

Credit: Oliver Dietze

独ザールランド大学の研究チームは、およそ-200℃以下の温度で超電導性を発揮する超薄型高温超電導フィルムを開発したと発表した。食品用ラップのように柔軟・軽量で、航空宇宙から医療技術に至る広範な応用が期待される。研究成果は、Superconductor Science and Technology誌に2月1日に公開された。

超電導体は、通常は非常に低温の臨界温度以下において、電気抵抗がゼロになる材料だ。磁石を低温の超電導体に近づけると、超電導体材料中に磁界と反発する方向に電流が生じるが、電気抵抗がないため電圧を加えることなく電流が流れ続ける。そのため、超電導体と磁石が反発しつづけ、磁石は超電導体上で浮揚することができる。映画「Back to the Future」に出てくるホバーボードのように、摩擦のない滑りも可能になる。特に液体窒素の沸点付近かそれ以上の温度で超電導を示す物質を高温超電導体と呼ぶ。

現在知られている超電導体材料の多くは、固くもろく重い。今回、研究チームは、高分子繊維の製造に使われているエレクトロスピニング技術を利用することで、髪の毛の1000分の1程度、300nm(ナノメートル)以下の超電導ナノワイヤーの作成に成功した。このナノワイヤーは高温超電導物質であるイットリウム系超電導体(YBOC)の一種で、これをプラスティック繊維とともにメッシュに折り込み、加熱することで、この高温超電導フィルムを作成した。

このフィルムは、柔軟で軽量、超薄型だ。食品用ラップのように、非常にしなやかで形状適合性があり、理論的にはどんなサイズのものも作成できる。また、「超電導セラミックスよりも、少ない原料で製造できるので、我々の超電導メッシュは安価に製造できる」と、研究チームを指導するUwe Hartmann教授は説明する。

このフィルムの特性のうち、軽量な点が特に有利だという。「密度は0.05g/cm3しかないので、宇宙開発など、重さが問題になる応用分野では大変有望だ。さらに、医療技術においても応用の可能性がある」と、Uwe Hartmann教授は述べる。他にも電磁遮蔽性を備えた被覆剤や、大電流を通せる柔軟な電線としても使えるという。

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Physicists develop ultrathin superconducting film – New nano-coating for space tech applications

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