理研、ナノサイズの四角形と間隔の組み合わせで自在に色を作るメタマテリアル・カラー技術を確立

左は理研ロゴの元画像、中はメタマテリアルで作製した理研ロゴの光学顕微鏡写真、右は中の電子顕微鏡写真

理化学研究所(理研)は2017年4月26日、アルミニウム薄膜で作ったメタマテリアルで、可視光全域をカバーする色を作り出すことに成功したと発表した 。極薄・超軽量で半永久的に色あせない特性を持つため、高解像度ディスプレイやカメラのカラーフィルターとしての利用や、光学機器の内壁、大型望遠鏡内の黒色塗装などに応用できると期待されている。

メタマテリアルは、ナノメートル(nm)サイズの構造体を大量に集積化して、自然界の物質では実現できない光学特性を持たせた人工物質。 ヒトの目が光の波長の違いによって色を区別する仕組みを利用し、メタマテリアルのナノ構造の大きさや形を変えることで吸収する光の波長を制御できるようになれば、さまざまな色を人工的に作り出せると考えられている。

しかしこれでまでのメタマテリアルを用いた研究では、吸収する光の波長がひとつに限定されるい、広範囲の波長幅にわたって光を吸収してしまいパステルカラーのような彩度の低い色しか作り出すことができない、といった課題があった。

今回、同研究チームは、遠心力で均一な膜厚に制御して塗布するスピンコーティング法や、電子ビームで描いたとおりの樹脂パターンを基板表面に転写する電子ビームリソグラフィー法、真空蒸着法などを駆使した。

まずはシリコン基板上にレジスト材料を均一に塗布。その上から電子ビームリソグラフィー法によって四角形のパターンを描き、レジスト材料の膜を現像することで四角形のレジストパターンを残した。

photo

a(i) 目的のメタマテリアル構造。
a(ii) 実際のできあがったメタマテリアルの電子顕微鏡写真。Dは260nm、Pは440nm、Gは180nm。白色光を当てると、四角形構造のサイズに応じた波長の光が吸収されて、反射光に色が付く。この場合は青色になる。
b(i) シリコン基板の表面にポリメチルメタクリレート(PMMA)レジスト材料(青)を厚さ150nmで塗布した後、電子ビームリソグラフィー法で四角形のパターンを描画する。
b(ii) (i)の表面に厚さ45nmのアルミニウム薄膜を、真空蒸着法で塗布すると、四角形のレジストパターン上とそれ以外のシリコン基板表面にアルミニウム薄膜が塗布される。

続いて厚さ45nmのアルミニウム薄膜を塗布。レジストパターンがあるところにはその上に、それ以外の場所にはシリコン基板上にアルミニウム薄膜を形成し、座布団のような形状のナノ構造を大量に作製する技術を確立した。ナノ構造を構成する四角形の1辺の長さと間隔を調整することで、さまざまな色を作り出せることを確認できたと報告している。

photo

(a) 赤・緑・青の各色を出すメタマテリアルの反射スペクトル。
(b) (c)のメタマテリアルの反射スペクトル。
(c) (a)の各色を出すメタマテリアルを集積して黒色になるようにしたパターンの電子顕微鏡写真。

関連リンク

プレスリリース

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る