産総研、高い電磁波遮蔽能を持つ水性塗料を開発 カーボンナノチューブを用いる

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今回開発した塗料を用いてポリイミドシートへ形成した塗布膜

産業技術総合研究所(産総研)は2017年6月12日、スーパーグロース法で作製した単層カーボンナノチューブ(SGCNT)を用いて、高い電磁波遮蔽能を持つ膜を形成する塗料を開発したと発表した。同研究所のナノチューブ実用化研究センターなどのグループの研究によるもので、様々な基材に塗布しやすい上、塗布膜は屈曲性に優れ、変形にも強いという。

電子機器の誤作動を起こす不要放射(スプリアス)を抑制する電磁波遮蔽対策には、従来、電子機器やそれに接続する部品を金属の筐体に収納する方法が用いられている。近年は電子機器の小型軽量化により、樹脂やゴムの複雑な形状の筐体や、それらの材料で覆われた部品が用いられることも多いため、筐体や部品を基材として電磁波遮蔽塗料を塗布する方法が注目されている。しかし現在の一般的な電磁波遮蔽塗料の1つである金属(銀(Ag))系塗料は分散媒に有機溶剤を用いるため塗布可能な基材が制限される。またカーボンブラック(CB)系塗料は遮蔽能が低いという課題がある。

産総研では、2004年に高純度のSGCNTを高効率で合成できるスーパーグロース法を開発。また、ゴム材料の中でSGCNTが網目状に広がり分散する技術を確立し、高い電磁波遮蔽能を持つSGCNTゴム複合材料を開発している。今回は、この分散技術を活用し、高い電磁波遮蔽能を持ちながら複雑な形状のさまざまな基材に塗布膜を形成しやすいSGCNT系水性塗料を開発した。

今回開発した塗料は、大面積平面に適したバーコート法や、複雑な形状への塗布に適したスプレー法などの塗布方法を選択できるため、さまざまな形状の基材に塗布できる。水性塗料なので基材の選択性も高く、塗布膜はSGCNTの機械的特性から屈曲性にも優れ、基材の変形にも追随できる。

また、塗料を高速で動かす作業時には塗料の流動性が高まり(粘度が下がり)、塗料の動きを止める終了時には塗料の流動性が低くなる(粘度が高くなる)性質が強い(塗布性に優れる)ため、塗布面での塗料の液だれが生じにくく、複雑な形状の基材にも塗布膜を形成しやすい。電磁波遮蔽能はバーコート法、スプレー法いずれも4.5〜6GHzの周波数領域で30dB(99.9%)以上となり、実用上必要な20dB(99.0%)以上を示す。さらに、180℃で24時間保持の加熱試験後も同等の遮蔽能を維持し、耐熱性にも優れている。

SGCNT系水性塗料(左)とせん断速度による塗料粘度の変化(右)

SGCNT系水性塗料(左)とせん断速度による塗料粘度の変化(右)

今回開発した塗料を用いて形成した塗布膜の電磁波遮蔽能

今回開発した塗料を用いて形成した塗布膜の電磁波遮蔽能

今回開発された塗料は、高温環境で使用される自動車用ワイヤーハーネスや、可動部や複雑形状を持つ産業用ロボットなど、様々な電磁波遮蔽対策への活用が期待できる。今後産総研では、企業から提供された基材にこの塗料を用いて電磁波遮蔽膜を形成し、サンプルとして提供することを検討している。

なお、この技術は、2017年6月14日〜15日にタワーホール船堀(東京都江戸川区)で開催されるプラスチック成形加工学会第28回年次大会の特別展示ブースで展示される。

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