東芝、スピントロニクス技術による超高感度のひずみ検知素子技術を開発

試作したスピンMEMSマイクロフォンの電子顕微鏡写真

東芝は2017年6月19日、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:極小の電気機械システム)センサー向けに、従来の金属ひずみゲージの2500倍、半導体ひずみゲージの100倍以上の超高感度スピン型ひずみ検知素子を開発したと発表した。あわせて、スピン型ひずみ検知素子を搭載したスピン型MEMSマイクロフォンも開発している。

MEMSセンサーの多くは、外部からの圧力や音圧などで変形するMEMS構造体と、変形したMEMS構造体に生じるひずみを電気信号に変換するひずみ検知素子から形成される。MEMSセンサー自身の精度は、ひずみ検知素子の高感度化などにより向上できる。産業/車載機器、インフラ構造物などの状態管理や故障診断用途でMEMSセンサーの開発が増えるにつれ、より微小な異常音でも高精度に検知できるよう、従来の半導体ひずみゲージよりも高いひずみ検知感度が求められていた。

今回同社では、従来HDDヘッドやMRAMに用いられているスピントロニクス技術(電子のもつ電荷とスピンの両方を利用する技術)を応用し、新たに「超高感度スピン型ひずみ検知素子」を開発した。同素子は、従来HDDヘッドの磁界センサーに用いられてきたMTJ(Magnetic tunnel junction)素子に、ひずみによって磁性体の磁化の向きが変化する磁歪効果(逆磁歪効果)を応用することで、ひずみ検知素子として機能させたものだ。磁性体層に磁歪効果の大きいアモルファスの鉄・ホウ素合金材料を採用してひずみ検知感度を大幅に向上させ、従来の金属ひずみゲージの2500倍、半導体ひずみゲージの100倍以上を実現している。
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さらに、同社はこのスピン型ひずみ検知素子を搭載したMEMSマイクロフォンを開発し動作実証に成功した。従来広帯域マイクロフォンでは、MEMS構造体に生じるひずみが小さいため十分な電気信号を得られず、微小な音の検出が困難だった。しかし、スピン型ひずみ検知素子により、両立が困難だった広帯域かつ高精度なMEMSマイクロフォンを実現。人が聞き取ることのできる音域を超えた超音波まで検出が可能で、機器の状態監視や故障診断などにおいて、幅広い周波数帯域の稼働音を高精度に取得できる。

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