10倍以上の電池容量を実現――沖縄科学技術大学、シリコン積層電極を使ったリチウムイオン電池を発表

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ナノ構造のタンタル(黒色)層とシリコン(青色)層の間に、ポロシティやチャネルが形成されることでリチウムイオンの高速移動が可能となる。また、タンタル金属の骨組み剛性がシリコンの膨張を抑制し、構造的安定性を維持する。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームが、これまでのグラファイトに替えてシリコンを負極に使うことで、リチウムイオン電池の容量と出力を増大するとともに、長寿命化を達成できることを発見した。将来的に、リチウムイオン電池における充電時間の短縮および長時間使用の可能性に繋がると期待される。研究成果は、『Advanced Science』誌に8月8日付で公開されている。

リチウムイオン電池は、携帯型エレクトロニクスから電気自動車まで普及が進んでいるが、充電速度および容量と出力の増大は、依然として大きな課題になっている。特に負極材料に着目すると、シリコン電極は一般的なカーボン(グラファイト)電極よりも大きなメリットがある。これはリチウム原子1個に対して炭素原子6個が結合する必要があるのに対し、シリコン原子1個はリチウム原子4個と同時に結合できるためだ。シリコンを電極に使うことで、吸蔵できるリチウムイオンが増加し、電池容量を10倍以上増大させることができるという。ただしその一方で、負極の体積が300~400%も膨張し、自己破壊を起こして構造的安定性を損ねるという致命的な欠点がある。

Mukhles Sowwan教授に率いられた研究チームは、クラスタービーム蒸着技術を用いて、不均質なシリコンのナノスケール薄膜層と、タンタル金属ナノ粒子から成る骨組みを交互に堆積することで、シリコン層とタンタル層のサンドイッチ構造を生成した。その結果、シリコン層が粒子状ポロシティを示すとともにタンタル金属ナノ粒子間にチャネルとして存在することで、その中をリチウムイオンが高速度で移動するとともに、構造全体に拡散することを見出した。

このようなナノ構造シリコン積層電極を負極に用いた場合、より多くのリチウムイオンの吸蔵とリチウムイオンの高速移動が可能となり、リチウム電池の容量と出力が増大して、1200mAh/gの容量レベルを達成することを確認した。

加えて、このシリコン積層電極においては、タンタル金属の骨組みがシリコンの膨張を制限する剛性を備えることで、構造的な安定性を維持できることも明らかになった。負極としての長寿命化が可能になり、バッテリーの効率を下げずに充放電を繰り返すことができるサイクル性にも優れているという。

ただし、この研究によるデザインは未だ概念実証の段階にあり、出力と容量を増大するための、様々な改善の余地があるという。論文の筆頭著者であるMarta Haro Remon博士は、「クラスタービーム蒸着技術は、自由度の高い積層方法であり、種々に調整できるパラメータが多い」とし、「例えば、積層数、積層厚さを最適化するとともに、タンタル金属を他の材料に置き換えることも考えている」と語り、この研究成果に基づく更なる検討により、将来的なリチウム電池性能の向上実現の可能性に言及している。

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