東大など、物理的圧力と化学的圧力を組み合わせて新しい鉄系高温超伝導を発見

東京大学と量子科学技術研究開発機構、日本原子力研究開発機構は2017年10月26日、京都大学や香港大学、中国科学院の研究者らと共同で、鉄系超伝導体セレン化鉄に化学的加圧と物理的加圧を複合的に用いることで、新しい高温超伝導相を発見したと発表した。

1986年の銅酸化物高温超伝導体の発見を機に、強相関電子系の超伝導の研究が活発に行われている。強相関電子系の超伝導は、従来の超伝導とは発現のメカニズムが異なると考えられており、この発現メカニズムの理解は、新たな高温超伝導物質の設計指針につながると期待されている。これまでの研究で、強相関電子系の超伝導は元素置換や加圧により、ある種の磁性が消失した先に発現することが知られており、磁性と超伝導の間には密接な関係があると考えられていた。

一方で、近年発見された鉄系高温超伝導体では、磁性に加え電子集団が一軸的な配向性をもった秩序状態(電子液晶状態)も超伝導と密接に関係があるという議論もなされてきた。しかし、両者が非常に近い条件で発現するため、検証は困難だった。

同研究グループは、銅酸化物超伝導体に次ぐ高温超伝導物質である、セレン化鉄の元素置換と物理的加圧による物性の変化に注目。多くの鉄系超伝導体は、物理的に圧力を加えた場合と化学置換による化学的圧力を加えた場合に、ほぼ同様の変化を示すが、セレン化鉄は例外的に両者の効果が大きく異なることが知られていた。化学的圧力では、この物質が示す電子液晶相が抑制される一方で、物理圧力では磁性相が出現する。この物性の変化の違いから、これら2つの制御を複合的に用いることで、電子液晶状態と磁性、また超伝導との関係を独立に調査できると考えた。

今回の実験では、セレン化鉄に物理的圧力と化学的圧力を組み合わせ、電子状態がどのように変化するかを網羅的に調べた結果、電子液晶相と磁性相の両方が消失した状態を作り出すことに成功。両圧力を適度に加えた領域に新しい高温超伝導が出現することを発見した。この新しい高温超伝導は、この物質が示す電子液晶相から離れた領域の磁性相近傍に現れることから、セレン化鉄における高温超伝導は電子液晶状態ではなく、磁性と密接に関係あることも突き止めたという。

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