日立、AIを活用しX線手荷物検査で物品の材質などから安全性を自動識別する技術を開発

X線手荷物検査システムでの安全性識別イメージ

日立製作所(以下、日立)は2017年11月1日、X線による手荷物検査において、AIを活用することで手荷物内の物品一つひとつを認識し、材質や密度などから安全性を自動識別する技術を開発したと発表した。AIは、一見安全な物品でも、材質や密度などから改造や細工が疑われる場合は目視検査を提案する。検査員は提案された疑わしい物品の検査に集中できるため、効率的で確実な手荷物検査を可能にし、検査待ち時間を短縮できる。

現在、空港などにおいてはナイフや爆発物などの危険物の素材である金属、有機物を識別できるX線検査装置を用いた手荷物検査が行われている。検査支援のために、危険物の形状を識別して警告する機能などが用いられるが、見落としを防ぐため、危険物が含まれない荷物も含め全ての手荷物を目視検査する必要があった。

今回日立では、危険物の見落としを防ぎながら検査を効率化するため、AIを活用して手荷物内の一つひとつの物品を認識した上で安全性を識別する技術を開発した。

この技術ではまず、X線の透過量から物品の単位面積あたりの質量を推定し、X線撮影画像から物品が存在する領域を画素単位で網羅的に特定。次に、深層学習(ディープラーニング)を活用して物品らしい形状を抽出することで、複数の物品が接していても別々に認識することを可能にしている。物品らしい形状が存在する領域と、はじめに特定した物品の存在する領域との間に差異がないかを検証して、物品の認識漏れも防ぐ。

さらに、危険物を誤って安全と判定しないよう、「ディープラーニングを用いた、安全な物品の識別」と、「物品の標準的な特徴を用いた、識別結果の信頼性検証」の2段階の安全性識別技術を開発した。あらかじめ安全な物品をディープラーニングを用いて学習しておき、抽出した画像が安全な物品か否か、その種類は何かを識別。次に、識別した物品のX線画像から得られた材質、密度、大きさなどの特徴を、あらかじめ準備した同じ種類の物品の標準的なデータと比較して、識別結果の信頼性を検証する。

同技術を適用したX線手荷物検査システムを試作し、延べ60人の来場者に対する手荷物検査の社内実験を行った結果、全ての手荷物を目視検査する従来の方式に比べて、同じ時間内に検査できる手荷物の数が約40%増加したことを確認したという。

同社では今後、同技術を活用したX線手荷物検査システムの2018年度中の実用化を目指す。

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