カリフォルニア大、高速衝突検知アルゴリズム「Fastron」を開発――手術支援ロボットの性能を向上

Fastron制御アーム(青色)が、人間が制御するアーム(赤色)を回避しつつ、目的位置(点線部)に移動している

カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、マシンラーニングを活用して、ロボットアームが運動する障害物を回避し、複雑で急速に変化する環境中を自在に動くことを可能にする、高速衝突検知アルゴリズム「Fastron」を開発した。外科手術や生活介護において、アシスタントロボットがスムーズに力を発揮できるようになると期待される。研究成果は、11月13日~15日にカリフォルニアのGoogle本社で開催された、ロボットラーニングに関する第1回年次学会において発表されている。

ある物体が他の障害物と衝突するかどうかを判定する衝突検知プログラムでは、物体と障害物の形状の3Dデータを作成し、対象とする空間の領域の全ポイントにおいて、2つの物体が交錯すかどうかを判定している。このリアルタイム計算には大きな演算パワーが必要で、かつ障害物が移動する場合には、さらに多くの計算が必要になる。

電気・コンピュータ工学科Michael Yip教授の研究チームは、「全ての物体形状と空間の状況を知る必要はありません。重要なのは、物体の位置関係が衝突に至るものかどうかなのです」と説明する。Fastronはまず、ロボットアームが動く範囲をConfiguration space(C-space)とし、その空間を「衝突しうるポイント」と「衝突しないポイント」の2種類の領域としてモデル化する。次に衝突の有無の分類境界(Classification boundary)、すなわちC-space内のどこに障害物が存在するのかというアウトラインを、少数のポイントを使って定義する。移動する障害物に対しては、この分類境界を更新するサイクルを繰り返す。従来の機械学習アルゴリズムは分野境界の更新が難しかったが、Fastronでは移動する障害物に対しても、機械学習による対応を可能とした。

研究チームによれば、Fastronの特徴は、一般的な衝突回避アルゴリズムがすべてのC-space内の点に対して計算するのに対し、分類境界の近傍だけを選んで判定することにある。モデルを簡略化することで、従来に比べて最大8倍の高速処理を実現したとしている。

限られたポイントのみで空間全体をモデル化したことによるリスクを回避するため、Fastron の衝突検知判定は安全サイドに振ってある。つまり、ポイントとポイントの間の空間では何が起きているかわからないため、その領域は衝突ありとしてリスクを回避することを重視したモデルとなり、結果として作業スペースは制限されているという。

研究チームは、例えば「da Vinci Surgical System」など外科手術用ロボット向けには、外科医や患者の臓器と絶対に接触しないよう安全性を高く保ちつつ、家庭用生活介護ロボット向けなどには、作業スペース確保を優先したリスク判定を適用するなどの応用を考えている。

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Speedy collision detector could make robots better human assistants

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