独カールスルーエ工科大学、ジェットエンジンの排出ガス半減に挑む

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ケロシンのアトマイズ実験:最適な液滴分布を計算するためシミュレーションを実施している

カールスルーエ工科大学(KIT)の研究チームが、ロールスロイス社の大学連携技術センター(UTC)と共同で、航空機の燃費を改善するとともに炭素微粒子や窒素酸化物などの汚染物質を半減に挑戦している。研究チームは、ジェットエンジンの燃焼プロセスを最適化するため、通常は津波の解析やコンピューターグラフィックで水のエフェクト計算に使用されるシミュレーション法を活用する。

最新の旅客機では、旅客1人あたりの燃料消費量は3リットル/100km以下のレベルに達しており、さらなる排出ガスの低減には燃焼プロセスそのものの改善が必要だ。レシプロエンジンと異なり、吸入/圧縮/爆発/排気のサイクルが同時かつ連続的に起こるジェットエンジンでは、吸入空気の速度は毎秒300mに達し、燃焼温度は材料の融点よりも遥かに高い。KITの熱タービン研究所(ITS)のリーダーRainer Koch氏は、「ジェットエンジンの燃料噴射や汚染物質低減の実験は非常に複雑で高コストになる」と説明する。

そこで研究チームは、燃焼室内での汚染物質の生成を予測するため、スーパーコンピューターを用いたシミュレーション手法に取り組んだ。元来天体物理学計算などに用いられてきたSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法を使い、バーチャル・インジェクション・ノズルから噴射される数百万の微小なケロシン液滴のサイズ、形状、軌道、運動を計算し、現実に近い形で可視化するものだ。

このSPH法による優れたシミュレーションだが、従来の有限要素法などと比較し、扱う体積要素が多くなりデータ量が膨大になるというデメリットがある。研究チームは、1回の燃焼解析で60テラバイトものデータを生成し、「通常のPCでは72年間かかる」と言われる処理を、スーパーコンピューターを使って約1カ月で解析した。

今回得られた3Dシミュレーションでは、ケロシンが投げ縄状の流れとなり、それが泡状となってさらに様々な形状の液滴へとアトマイズされるという、燃焼室内部の様子を「目視」できる。「この素晴らしいシミュレーションによって燃焼室で起きるプロセスの詳細についての理解が容易になり、インジェクション・ノズルの形状を著しく改善することができた。実物のジェットエンジンは1基5~20億ユーロもするが、シミュレーターなら1日数万ユーロのコストだ」と、Koch氏はその成果を説明する。

UTCと共同研究をするKITのガスタービン研究所(ITS)は、企業技術者が研究テーマを提起し、大学研究者がコンピューター・モデルを開発して実験で検証することを目的として2007年に設立された。UTCのHans-Jorg Bauer所長は「この研究成果は実際の開発に組み込まれ、新型ジェットエンジンの開発に貢献するだろう」と、その活動に期待している。

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