JSTとTANAKAホールディングス、銀ナノインク印刷技術で曲がるタッチパネルを実現

科学技術振興機構(JST)は2017年12月14日、田中貴金属工業に委託し同社の新事業カンパニーで企業化開発を進めていた「金属細線を用いたタッチパネル用センサフィルム」の開発に成功したと発表した。これにより、3次元曲面のディスプレイや屈曲可能なディスプレイなどにも利用可能な、高機能タッチパネル用センサフィルムを低コストで製造できるとしている。

社会の情報化の進展とともに、ディスプレイ一体型のタッチパネルがスマートフォンから大型ディスプレイまで幅広く利用されている。さらにディスプレイの形も平面形状だけではなく、3次元曲面や曲がるディスプレイが発表されており、これらに対応できるタッチセンサーが求められている。

現在主流となっている静電容量方式タッチパネルでは、センサーに酸化インジウムスズ(ITO)が使用されている。しかし、ITOは電気抵抗値が高く曲げに弱いため、大型化や曲面化ができないという問題があった。これを解決する材料として、金属細線を電極にするメタルメッシュ(MM)が注目されているが、4μm以下の細線化が難しく近距離で使用するスマートフォンの場合には配線見えの問題があるため、大型ディスプレイ用途でしか普及には至っていなかった。

今回の開発では、2016年に開発された、銀ナノ粒子を高濃度に含む銀ナノインクを表面コーティングして超高精細な銀配線パターンを製造する印刷技術「スーパーナップ(SuPR-NaP;表面光反応性ナノメタル印刷)法」を実用的な製造速度に適応させるため、印刷の反応機構の解明や製造装置の開発、各工程の条件検討を行った。

その結果、「全工程ロールtoロール方式」で、スマートフォンでも使用可能な線幅2~4μmのMMフィルムを製造するシステムを完成した。全工程ロールtoロール方式とは、製造プロセスを全て、ロール状に巻いたフィルム基板に回路を印刷形成し、ロールに巻き取るようにしながら生産すること。製造したMMフィルムは20万回(半径2mm)の折り曲げ試験でも抵抗値の変化はほとんどなく、一般的な信頼性試験もクリアしているという。

微細配線フィルムを全工程ロールtoロール方式により製造可能にした今回の成果は、フレキシブル電子デバイス市場に向けたプリンテッドエレクトロニクスの重要な技術革新であり、抗菌・触媒・遮熱などの機能フィルム樹脂のようなフィルム上に金属パターンが必要なアプリケーションにおいても応用が期待できるとしている。

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