京大、半導体ナノ粒子が光を電子へ変換する過程を解明――太陽電池や光検出器の高効率化に期待

京都大学は2017年12月14日、同大学の研究グループが、半導体ナノ粒子が光を電子へ変換する過程を解明したと発表した。

半導体ナノ粒子は、化学合成によって作られるナノメートルサイズの微結晶である。高い発光効率を示すことから、色鮮やかな液晶ディスプレイの発光体として使用されている。ナノ粒子の多彩な色を作り出すのは、電子を数ナノメートルの領域に閉じ込めることで生じる「量子閉じ込め効果」と呼ばれる量子力学的な現象であり、この効果を最大限に活かす研究として、光から電気エネルギーへの変換(光電変換)に利用する応用研究が世界的に進められている。

特にナノ粒子では、一つの光子から多数の電子を生み出すことができる「マルチエキシトン」という状態について研究が行われているが、ナノ粒子が光を吸収して多数の電子を生み出す過程を直接的に観測することは難しく、その過程はこれまで明らかになっていなかった。

同研究グループは、ナノ粒子の超高速な量子力学的変化を測定する手法を独自に開発し、ナノ粒子が光を吸収した直後の状態の観測に成功した。照射する2本のパルス光の位相を制御することで、ナノ粒子内に作り出したマルチエキシトンの量子力学的な干渉効果を測定した。その結果、マルチエキシトンが生成された直後は、レーザー周波数に追従して振動する量子力学的な状態(コヒーレント状態)を作り出していることを観測した。

さらに、マルチエキシトンを形成している電子と正孔(電子が抜けてできた空孔)の個数に応じて、レーザー周波数の1倍/2倍/3倍の周波数を持つコヒーレント状態が生み出されることも発見した。これらの量子状態は、一つの光子から多数の電子を生み出す駆動力になるため、ナノ粒子を光吸収体として利用した太陽電池や光検出器の高効率化につながるとしている。

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