リムリック大、バイオ分子からピエゾ電気を得る研究を発表

アイルランドのリムリック大学のバーナル研究所が、バイオ分子のグリシンを軽く叩いたり、押したりするだけで電子デバイスを駆動するのに十分な電力が得られることを発見したと発表した。この研究成果は『Nature Materials』に論文「Control of Piezoelectricity in Amino Acids by Supramolecular Packing」として2017年12月4日に掲載されている。

グリシンは、最も単純なアミノ酸のひとつで、一般的な圧電素子の1%未満のコストで製造できる。論文著者である大学院学生 Sarah Guerin氏は「このような小さな分子が非常に多くの電気を発生させることに驚いた」と述べている。Gurein氏は、コンピューターモデルを使って様々な結晶の電気的応答を予測し、グリシンによる結果が予想外に大きいことを見つけ、グリシンの長い結晶をアルコール中で成長させたという。

Gurein氏の指導教官であるDamien Thompson教授は、「我々が研究しているこのコンピューターモデルは、実験による試行錯誤を大幅に省くことができる。具体的な結晶の作成指針や切り出し方、圧力の加え方も予測できるので、数年分の作業を効率化できた」と説明する。

また、共同著者で医療機器研究センター(CURAM)のTofail Syed教授によれば、生分解性を備えた発電素子、身体の内部の疾患を検出するデバイスや生理学的に制御される薬物ポンプへの応用について研究中だという。

なお、バーナル研究所ではこれまでに涙や卵白、唾液、骨の成分に見られる球状タンパク質リゾチームが、ピエゾ効果を持つことを発見している。自動車や携帯電話、ゲームコントローラーなどに広く用いられている圧電素子には鉛やリチウムなどの有害物質が含まれているが、一連の研究成果は、生体適合性を備えかつ大幅なコスト削減の可能性がある圧電素子の開発に繋がっていくと期待される。

バーナル研究所所長、Luuk van der Wielen教授は「私達の発見は、バーナル研究所で受け継がれてきたバイオ分子によるピエゾ電気研究が、現実的かつ産業用途に利用可能な局面に到達していると読み取れる」と評している。

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Researchers squeeze low-cost electricity from biomaterial

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