リチウムイオン電池の寿命を大幅に延長する、シリコン微粒子と数層グラフェン複合材を開発

英ウォーリック大学WMG(Warwick Manufacturing Group)上級研究員のLoveridge Melanie博士らは、数層グラフェンをリチウムイオン電池のアノード電極を強化する桁(けた)構造として利用し、リチウムイオン電池の動作寿命を大幅に延ばすことに成功した。この研究成果は『Nature Scientific Reports』に論文「Phase-related Impedance Studies on Silicon–Few Layer Graphene (FLG) Composite Electrode Systems」として2018年1月23日に掲載されている。

リチウムイオン電池がSONYによって初めて製造されて以降、そのアノード材料にはグラファイトが使われてきた。近年では、資源量が豊富かつエネルギー容量がグラファイトの10倍と大きいシリコンで置き換える研究が盛んに行われている。しかし、ミクロンサイズのグラフェンとナノサイズのシリコン粒子を混合した複合材をアノードに利用した場合、反応性の高い表面積が劇的に増加することで最初の充電サイクル中にシリコン上に多くのリチウムが析出してリチウム濃度が減少、電池寿命を短くしてしまうという課題が知られている。

そこでLoveridge博士らの研究グループは、数層グラフェン(FLG:few-layer graphene)をミクロンサイズのシリコン粒子と混合した複合材を使ってアノードを形成した。そして100回以上の充放電実験を繰り返したところ、リチウムイオン電池の寿命が延び、出力も増加したことを確認した。アノードの組成比はシリコン粒子が60%、FLGが16%、ポリアクリル酸ナトリウムが14%、炭素添加物が10%と報告されている。

Loveridge博士は「アノードに混合したFLGの薄片が弾力性のある桁構造として機能してアノードを強化し、シリコン粒子を保護している。さらにFLGがシリコン粒子間の距離を維持する役割を担い、粒子同士が電気化学的に結合してしまうことを防いでいる。これによってリチウムイオンの拡散を抑制し、電池寿命の低下が起きないよう機能している」と、このシリコン/グラフェン複合材料の働きを説明する。そして今後、この技術を用いた高エネルギー/高出力用リチウムイオン電池の工業的生産を目指して研究を進めるとしている。

関連リンク

Adding graphene girders to silicon electrodes could double the life of lithium batteries
Electrochemical Evaluation and Phase-related Impedance Studies on Silicon–Few Layer Graphene (FLG) Composite Electrode Systems

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