筋肉のようにワークアウトで強くなる――機械的ストレスで強靭になるスマート材料を開発

アイオワ州立大学材料工学科Martin Thuo助教授らの研究チームは2018年2月14日、ワークアウトで筋肉が強靭になるように、機械的なストレスを加えると強靭になるスマート材料を開発したことを発表した。このスマート材料は、機械的な捩じりや曲げによって硬さが300倍にもなり、自重の50倍を保持できるほどの剛性を示すという。この研究成果は『Materials Horizons』に論文「Mechanically triggered composite stiffness tuning through thermodynamic relaxation (ST3R)」として2018年1月23日に発表されている。

研究チームは、溶解した金属の液滴を酸素雰囲気中に晒すことで液滴の表面に酸化層を形成、内部の溶融金属を液体のまま保ちながら直径1~20umの金属粒子を生成することに成功した。この粒子の内部では金属が融点以下で液体の状態を保持しており、いわゆる過冷却状態にある。さらにこの粒子を破壊することなく、ゴム状のエラストマー材料と混合することで、過冷金属とエラストマー材のハイブリッド材料を作り出した。

このハイブリッド材に、押す、捻る、曲げるなど一定以上の機械的ストレスを加えると、エラストマー材を経由して加わる応力により金属粒子の酸化膜が破壊する。すると内部の液体金属が酸化膜の外に流れ出て、同様に他の粒子から流れ出た液体金属と融合する。ここで液体金属は過冷却状態にあるため直ちに凝固して金属メッシュを形成、ハイブリッド材の内部構造を補強することで強度を増すことになる。つまり、このハイブリッド材は機械的ストレスを繰り返し付加することで徐々に強度を増し、あたかも鍛えられることで強靭になる筋肉のような性質を示す。

研究チームは、機械的ストレスの大きさで液体金属が酸化膜から流れ出すタイミングは調整できるとし、さらに金属の種類や粒子サイズ、エラストマー材の種類も変更できるとしている。Thuo助教授は、「今回の実験にはビスマス、インジウム、スズの低融点合金を使用したが、他の金属でも過冷却による応答反応は同じであり、あらゆる金属でハイブリッド材料が作れるだろう」と語る。

今回開発されたハイブリッド材料は、その特性変化に熱や光や電気を必要としないため、微細な生体組織の保護といった医療分野での応用や、脆弱なセンサーの保護など産業分野での応用が期待できるとしている。

関連リンク

Engineers develop smart material that changes stiffness when twisted or bent
Mechanically triggered composite stiffness tuning through thermodynamic relaxation (ST3R)

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