「窒素インフュージョン技術」で超伝導加速空洞の性能が向上 高エネルギー加速器研究機構

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J-PARC真空炉とインストールされた単セル超伝導加速空洞

高エネルギー加速器研究機構は2018年3月5日、国際リニアコライダー(ILC)の実現に向けた「窒素インフュージョン技術」によるニオブ製超電導加速空洞の性能向上の研究において、同技術によって加速勾配約5%、最大加速勾配でのQ値で約25%の性能向上が得られたと発表した。

窒素インフュージョン技術は、米フェルミ加速器研究所(FNAL)が2016年に提唱した超電導加速空洞の新しい表面処理方法だ。ILCの標準表面処理方法は、電解研磨で100μm程度表面を削ってから800℃で3時間の熱処理を行い、次に仕上げの電解研磨で20~40μmの表面処理を行う。その後超純水高圧洗浄してから組み立てて、最後に120℃で48時間ベーキングを行う。

窒素インフュージョン技術を使った表面処理は、熱処理の後に、加熱真空炉を真空に保ったまま120度まで冷却し、その状態で10万分の3気圧程度の窒素を真空炉内部に導入して48時間保持する。仕上げの電解研磨とベーキングは行わずに、超純水高圧洗浄をしてから組み立てる。

同技術では、微量の窒素を数十~数百nmという空洞表面の非常に薄い部分に取り込むことで、超電導特性の向上が見込まれる。一定の長さで得ることができる加速エネルギーを表す加速勾配、および一定の電界強度を実現するために必要な電力量を示すQ値において、FNALの結果を参考にすると、加速勾配が約10%、Q値で約100%の性能向上が期待される。

同機構では2017年から実験を行っており、これまで数回窒素インフュージョンに挑戦。これまで真空炉からの汚染による空洞性能の劣化などが発生したが、真空排気系を工夫するなどの改良を実施しながら実験を継続。今回加速勾配で約5%、最大加速勾配でのQ値で約25%の性能向上が得られた。同様の性能向上が確認できたのは、FNALに次いで2例目となる。

現在、さらに良い結果を出すために温度や窒素濃度などのパラメーターの最適化を行っているが、今後は現在の単セル空洞から、ILCでの使用を見越した9セル空洞での性能実証を進めていく予定だ。

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