有機デバイスの高性能化に期待。金属電極と分子間の結合形成過程を分子レベルで解明――東工大

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単分子接合の電流-電圧特性(I-V特性)計測の概念図(黄色が金属、間の青い構造体が分子)

東京工業大学は2018年3月7日、同大学の研究グループが、単分子接合の電気特性を精密計測し、金属電極と分子間の結合形成過程を分子レベルで解明することに成功したと発表した。

分子を金属表面に近づけると、軌道が混じりあって化学結合が形成され、分子が金属表面に吸着する。分子の吸着過程にともなう結合形成過程の解明は、触媒反応や化学結合を理解するために重要だ。また、金属と分子の界面構造および電子状態の解明は、有機デバイスの動作機構解明、機能向上に不可欠とされる。

しかし、これまで金属表面上の分子吸着系について様々な研究が行われてきたが、金属と分子の距離を変えながら、界面構造や電子状態の変化を明らかにすることは難しかった。なぜなら、金属と分子の距離を精密に制御し、準安定状態で、その構造や電子状態を決定することが、実験的に難しかったからだ。

金属電極間に単分子を架橋させた構造は単分子接合と呼ばれ、分子が金属と2ヵ所で接している。この分子は孤立分子と異なる性質や機能を示すことがあり、新物性等の探索の場として注目されている。同研究グループでは、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、各種の分子と金属電極からなる単分子接合を作製し、電流―電圧特性(I-V特性)を計測。分子軌道のエネルギー位置を実験的に決定した。

計測は、ジアミノベンゼン(DAB)、ピラジン(PY)、ビピリジン(BPY)、フラーレン(C60)の各分子を吸着させた金(Au)の単結晶基板に、同じく金(Au)のSTM探針を近づけることで行われた。単分子接合に与える電圧を一定速度で変化させ、単分子接合を流れる電流を計測することで、I-V特性を計測。これを解析することにより、分子の軌道エネルギーおよび金属と分子軌道の重なり具合を決定することができる。

その結果、単分子接合の距離を伸長させた際の分子軌道のエネルギー変化を見ると、ジアミノベンゼンでは、伸長距離が変わっても分子軌道のエネルギーはほとんど変わらなかった。ピラジンとビピリジンは、伸長距離が短い領域では、距離に従って分子軌道は低エネルギー側にシフトするが、その後はあまり変化しなかった。フラーレンでは、逆に伸長距離が短い領域で距離に従って高エネルギー側にシフトし、その後一定値となった。

接合する分子によるこのエネルギーシフトの違いは、金属と分子間の結合様式によって説明できる。ジアミノベンゼンの場合は、分子の窒素原子と電極の金原子が、電極間距離が変わっても軌道の重なりがあまり変化しないσ結合(結合軸方向を向いた軌道同士の重なりで形成される化学結合)で結合している。一方ビピリジンの場合、これら原子間のσ結合に加えて、結合軸に直交する窒素のp軌道が金の軌道とπ結合(結合軸に直交したpz軌道同士の重なりで形成される化学結合)を形成できる。電極間距離が短い場合は強いπ結合を形成し、電極間距離を離していくとπ結合が弱くなる。さらに距離が離れるとπ結合できなくなり、σ結合のみが形成され、エネルギー位置はほとんど変化しなくなる。

今回の研究により、金属と分子の距離に応じた分子軌道のエネルギーシフトを実験的に見出すことができ、分子軌道のエネルギー位置の変化は金属と分子の結合様式に依存することがわかった。理論計算でも、金属と分子間の距離に依存した軌道エネルギーシフトを再現し、実験結果と比較することで金属と分子界面の構造を決定した。

有機ELや有機太陽電池などの有機デバイスでは、分子軌道のエネルギー位置が界面における電子移動の速度を決めるなど、重要な役割を果たす。今回の研究では、分子軌道のエネルギー位置をπ結合で距離によりチューニングできることを示した。この知見を有機デバイスに適用することで、有機デバイスの動作機構の解明、機能向上へつながることが期待される。

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