アンモニア水とアルコールから第一級アミンを効率的に合成する触媒系を開発――有害な副生成物を生まない合成法に期待

京都大学は2018年3月8日、同大学の研究グループが、アンモニア水とアルコールから合成化学的価値の高い第一級アミンを効率的に合成できる触媒系の開発に成功したと発表した。今回開発した触媒は、水溶媒中で行う有機合成反応の研究において、実用性の高い触媒として期待ができるという。

第一級アミンは、医薬、農薬、機能性材料、樹脂合成のための中間原料として広範に用いられている。安価で取り扱いの容易なアンモニア水を窒素源として用い、水を溶媒とする触媒反応によって第一級アミンを触媒的に合成できれば、目的生成物以外に副生するのは無害の水のみとなる。そのため、環境調和性や原子効率に優れた合成手法として魅力的と考えられており、この触媒反応を高効率的に達成する新しい触媒系の開発が望まれてきた。

同研究グループは過去に、アンモニア水とアルコールが連続的に複数回カップリング反応を起こして、第二級アミンや第三級アミンを与えるイリジウム触媒を開発してきた。そこで、このイリジウム触媒の触媒設計を見直し、新たなイリジウム錯体触媒を開発した。今回開発したイリジウム触媒には、イリジウム周辺が適度に混み合った環境にするために立体的に嵩高く、高い電子供与性を持った含窒素複素環カルベン(NHC)という配位子を導入した。また、アンモニア水を原料として使うため水に溶けやすいイオン性であり、かつ空気中でも安定しているため、取り扱いがしやすいという。

このイリジウム触媒を用いることによって、アンモニア水とアルコールの反応が良好に進行するようになり、最高収率89%で第一級アミンを合成することが可能になったという。また、使用できるアルコールの種類も25種類以上にのぼり、さまざまな第一級アミンを合成できる触媒系を構築できたとしている。一方で、使用する触媒の量が多い点や、反応を比較的高い温度で行わなければならないといった弱点も抱えているため、今後はより高性能な触媒の設計・合成にも取り組むとしている。

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