「BIPM地球時」と比べ半年でわずか12億分の1秒以下のずれ――光格子時計を利用した高精度な時刻標準の生成にNICTが成功

情報通信研究機構(NICT)は2018年3月15日、光格子時計と水素メーザ原子時計を組み合わせた「光・マイクロ波ハイブリッド方式」を新たに開発し、光格子時計に基づく高精度な時刻信号の発生を世界で初めて半年間継続させることに成功したと発表した。

各国の標準時は、国際度量衡局(BIPM)が生成する協定世界時を参照し、これと同期する形で生成・維持されている。NICTが生成する日本標準時は、協定世界時に対して常時ほぼ5000万分の1秒以内の時刻差を維持している。1秒の長さは、セシウム原子のマイクロ波遷移の周波数を91億9263万1770Hzとすることで決まり、現在、世界最高精度のセシウム時計は、正確な1秒間を±1.1×10-16秒の精度で実現できる。

一方で、NICTにおいて開発されたストロンチウム光格子時計は、セシウム時計を超える5×10-17の精度を保っており、この精度を時刻維持に利用することが期待されてきた。しかし、光時計は装置が複雑なため、長期にわたり無人で動作して時刻を示し続けることが難しく、光時計に基づいて時を刻むことは実現していなかった。

今回、NICTはストロンチウム光格子時計と従来のマイクロ波時計で無人運転可能な水素メーザ原子時計を組み合わせて、時刻信号を発生する新しい方式「光・マイクロ波ハイブリッド方式」を新たに開発した。今回生成に成功した高精度な時刻信号の1秒の精度は5×10-16秒以内であり、世界の標準時である「協定世界時」よりも正確だ。BIPMが世界中の原子時計データを利用して計算する最高精度の仮想時刻「BIPM地球時」と比べても、ずれは半年でわずか12億分の1秒以下(0.79ナノ秒)であり、同程度かそれ以上の性能を持つことが明らかになったという。

国際度量衡委員会時間周波数諮問委員会では、2026年に秒の定義を原子の光領域にある遷移周波数に変更することを検討している。光時計によって協定世界時を校正することは、秒の再定義のための必須条件の一つとなり、今回の成果は、この条件をクリアする有力な方法になると説明。光時計を複数用意して、週1回などの定期的な運用が確実にできるようになれば、この方式を日本標準時に適用して精度を1桁改善した、より正確な1秒を標準時として発生できるようになるとしている。

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