摂取した食品を常時監視できる――歯に貼れるパッシブRFセンサーを開発

2×2mmのセンサーが、流動物を摂取して、その情報を無線送信する。

タフツ大学工学部の研究チームが、歯に直接装着して、糖分や塩分、アルコールの摂取量等の情報を送信できる小型センサーを開発した。将来的には、栄養分や化学成分、生理的状態など広範囲なデータが取得できると期待されている。研究成果は、2018年3月23日付『Advanced Materials』誌に公開されている。

健康管理や臨床研究の分野において、人間の体内や周辺環境の状況をリアルタイムモニターすることは非常に重要だが、実施にはかなりの困難を伴う。例えば食事の摂取をモニターするためにはマウスガードや大掛かりな配線が必要で、モニター用のセンサーが劣化しやすく交換が頻繁になるなどの課題がある。

今回タフツ大学の研究チームは、わずか2×2mmのサイズで、柔軟に変形し、歯の不規則な表面にも接着できるセンサーの開発に成功した。このセンサーには、メタマテリアルの構成要素としても利用されるスプリットリング共振器(SSR)を活用している。これは、リングの一部が分割された金属リングで構成され、透磁率と誘電率が共にマイナスであるという、自然界には存在しない特異な周波数応答性を示す。

このセンサーは3層のサンドイッチ構造で、中央に多孔質シルクフィルムと温度/pH応答性ポリマーである変性PNIPAMヒドロゲルを「生理応答層」として配置、それをAu(金)の正方形スプリットリングで両側から逆向きに挟んでいる。このセンサーに無線スペクトルの電波を当てると、特定領域のみの電波を反射する2x2mmの超小型アンテナとして機能する。これは、白色光を照射された青色ペンキが、青よりも赤外側(黄色)の波長を吸収し、(補色である)青色の波長を反射することで、人間の目に青く見えるのに似ている。

今回開発したパッシブ誘電体センサーがペンキと違うところは、吸収する「色」を変えられるという点だ。生理応答層が塩分やエタノール等を吸収すると、その電気的性質がシフトし、反射する無線周波数やその強度が変化する。これにより、他の栄養分や物質などを検出できるという。

論文の責任著者であるFlorenzo Omenetto教授は、「このセンサーの生理応答層を変更することで、他の物質を検出することが理論的に可能だ」と語る。そして「この技術は一般的なRFID技術を、歯や皮膚などに貼り付けて環境情報をリアルタイムにモニターできるセンサーパッケージへと拡張したと言える」と、その研究成果を説明している。

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