物理学の未解決問題を解くカギになるかーー偏光した電磁場が電子に与える影響、OISTが実験で確認

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実験で使用した装置の前に立つ、OISTのデニス・コンスタンチノフ准教授 (左) とオレキシー・ザドロシュコ博士(右)

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2018年4月10日、二次元平面上の電流を測定し、さらにマイクロ波の偏光を変化させることで偏光が電子の動きに影響を及ぼすことを示したと発表した。今回の発見が「偏光した電磁波の影響を受けた際、電子はどのように動くか」という物理学の未解決問題を解く鍵になる可能性がある。

電磁波や光波などの波が回転するときに偏光は発生する。電磁場の一種のマイクロ波は、時計回りか反時計回りに回転する電場を持つ。物理学ではほぼすべての理論で、マイクロ波は電子の回転に影響を及ぼすとされているが、実際の実験では電子がマイクロ波の偏光の影響を受けていないように見えるという未解決の問題が存在する。

この問題に取り組むため、同大学のデニス・コンスタンチノフ准教授らの研究グループは、ウクライナの研究所と共同研究を行った。ウクライナの研究者が研究における主要な理論を検証するために数学的枠組みを開発し、OISTの研究グループが実験による検証をした。

実験概略図。回転するマイクロ波の場(E)が円形の電子層を通して送られる間、電圧(V)をかけて電流(I)を測定した。

電子の動きを調べる実験は従来、半導体のような固体状態の材料で行われていた。しかし、固体中の除去不可能な不純物によって実験結果が大きく左右されるという欠点があった。

同グループは液体ヘリウムを用いて、半導体の機能をよく模倣した実験システムを作成。真空槽内に閉じ込められた液体ヘリウムの表面上の電子をおよそ-273℃の絶対零度まで冷却した。ヘリウムは絶対零度下においても液体であるという独特な性質を持つ。一方で他の不純物は凍結し、容器の壁に付着した。

コンスタンチノフ准教授によると、このときヘリウムの表面の電子が「量子化」され、液体に垂直な電子の動きは2次元空間内に「凍結」された。

実験では円形の偏波マイクロ波を電子層に送り、マイクロ波の場の回転と同じ方向に電子を回転させたところ、電圧をかけた測定中の電子の流れが磁場で振動。 磁場の方向を変えて電子の回転を反転させると、振動が著しく弱まった。 さらに、同グループは電子の回転を変えずにマイクロ波の場の回転方向を逆転させることでも、同様の挙動をすることを確認。電子は電磁波の偏光の影響を実際に受けることを示した。

凝縮ヘリウム上に電子を載せた真空槽。 マイクロ波が、円柱の導波管を通って導入され、球面鏡によって電子上に集束する。

色のついたプロットは、マイクロ波の磁場と周波数が変化する際の電子の流れを表す。 白い線は 磁場方向への強い依存性を表す。

今回の実験結果により、電子は電磁波の偏光の影響を実際に受けることを確認できたという。OISTの研究グループは今後、これらの電子がなぜこのように振る舞うのか、さらに正確に理解できるように努めていく考えだ。

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