ナノシートを光で操作し、配列を制御することに成功――工業、医療などへの応用に期待 山口大など

一枚のナノシートが捕捉され、向きを変えていく様子

山口大学、九州工業大学、東京農工大学による研究グループは2018年4月16日、ニオブ酸ナノシートの光操作に成功したと発表した。光によりナノシートを動かした初めての例であるとともに、ナノシートの位置や向きを自在に制御できた初めての例だという。

グラフェンに代表されるナノシートは厚さがナノメートル程度の物質で、厚さ方向と拡がり方向とで性質が大きく異なる。ナノシートの優れた性質を最大限に引き出すには、ナノシートの向きを、「オンデマンド」、「空間選択的」かつ「自在」に制御することが必要となるが、これまで実現する技術はなかった。

今回の研究では、ナノシートに光を照射して、その向きを「オンデマンド」、「空間選択的」かつ「自在」に制御する技術を実現した。まず、水中にナノシートを均一に分散させ、直線偏光のレーザー光を集光して照射したところ、ナノシートは焦点でその面がレーザー光の進行方向に対して平行になるように捕捉されることがわかった。さらに、補足されたナノシートは、照射したレーザー光の偏光の向きと同じ向きになった。照射する直線偏光のレーザー光の偏光の向きを回転させると、ナノシートの向きはそれに同期して回転し、レーザー光照射によるナノシートの光捕捉および配向挙動の特徴を明らかにした。

次に、液晶状態にあるナノシートに直線偏光のレーザー光を照射すると、焦点の大きさが1μmに満たないにもかかわらず、焦点を中心として100μm以上の範囲のナノシートに向きの変化が生じた。変化の生じ方は2通りあり、1つは焦点近くで生じ、ナノシートを水中に均一に分散させた系と同様だが、もう1つは焦点の外側で生じ、ナノシートがレーザー光の進行方向に対して平行になりながら、焦点を中心とする木の年輪のようなパターンに配列することがわかった。このような大きな構造体を光により生成できた例は初めてで、厚さと拡がり方向の大きさの差が大きいナノシートならではの新しい機能だという。

ナノシート液晶の光捕捉。ACS Photonics, DOI: 10.1021/acsphotonics.7b01230に 掲載の図を転載。

同研究グループでは、今回発見されたナノシートの向きの制御技術は、ナノシートによる半導体素子や透明導電体への応用、あるいはナノシート液晶による表示素子や光シャッターとしての応用において不可欠なものとして、今後工業的に利用されていくと見込んでいる。また、光の集光を線状やパターン状、らせん状にすることで、医薬品や酵素など様々に応用することも期待できるとしている。

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