電子のスピン機能により、半導体デバイスの廃熱を電気信号として再利用することに成功 京大など

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今回試作したシリコンスピンMOSFETデバイスの構造図

京都大学は2018年5月7日、TDKならびに大阪大学と共同で、電子のスピン機能を用いて、シリコン半導体デバイスで発生する廃熱を電気信号として再利用することに、世界で初めて成功したと発表した。

CMOSトランジスタの微細化による低消費電力化と高速化は、微細加工の限界に起因するスケーリング則の限界に達しつつある。さらに情報維持に必要な1チップあたりの消費電力は増加し続けており、省エネルギーの観点からも課題がある。このため、新たな動作原理を有する低消費電力かつ不揮発記憶機能を備えた次世代の情報デバイスの開発が期待されている。

そのようなデバイスとして期待されるものの1つに「スピンMOSFET」がある。スピンMOSFETは、電極に磁性体を用いて、メモリ機能とトランジスタ機能を併せ持つ新型のデバイスだ。不揮発性記憶機能を持ち、高速動作と高集積化を実現できる可能性があるとされている。

特にシリコンを用いたスピンMOSFETは、シリコンが自然界に多数存在しかつ無毒であることや、シリコンでは情報伝播に用いるスピン角運動量が比較的長時間保持できること、さらに従来のシリコンエレクトロニクス技術やインフラを利用できることなどから、盛んに研究が進められてきた。京都大学とTDKの共同研究グループはこれまでも、シリコンスピンMOSFETの室温動作に世界で初めて成功したり、大幅な性能向上に成功したりしてきた。

今回の共同研究では、試作したシリコンスピンMOSFET内で、シリコンにスピンを輸送するためにFeとシリコンの間で電流を流すことによって生じる、Feとシリコンの温度差を利用して、廃熱を電気信号に変換する。これには、熱によって電子の流れである電流を発生させて電力に変換する「ゼーベック効果」のスピン版である「スピン依存ゼーベック効果」を利用している。熱によってスピンの流れを発生させ、これを磁気抵抗効果を用いて電気信号として読み出す。

今回の研究成果は、現在のエレクトロニクスが直面する膨大な発熱、廃熱問題を解決する新しい技術の確立を意味するという。将来的には、効率的に熱を電気信号に変換することで、新しい情報処理システムへの応用が期待できるとしている。

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