原子力機構、電子状態計算による合金設計手法を開発――割れにくいマグネシウム合金開発へ貢献

日本原子力研究開発機構は2018年5月11日、大型計算機「ICE X」(アイス エックス)を用いた電子状態計算により、合金の「割れにくさ」を向上させる元素を探索する手法を開発したと発表した。

マグネシウム合金は、延性が低く割れやすいものの、軽いという特徴から、アルミニウム合金に代わる材料として注目されている。そのため、より延性や割れにくさを高めるマグネシウム合金の開発が求められている。しかし、イットリウムなどの一部の元素は、添加することで延性や加工性が向上するものの、希少元素であるため実用化が難しく、より安価な合金開発が期待されていた。

一方、合金設計において、強度を向上させる手法は知られていたが、割れにくさに関する実験指針は存在しなかった。また、このような合金元素の影響を明らかにするには、原子レベルのモデルと電子の結合までを考慮した複雑な計算が求められる。そのため、莫大な計算資源が必要とされ、過去にはあまり行われてこなかった。

そこで研究グループは、まず合金元素による割れへの影響を表す評価法を開発した。その評価法では、界面に合金元素が存在するときの影響を電子構造に基づく計算によって評価し、さらに、割れが生じるときの離れた状態も同時に評価する。それは、マグネシウム合金では、粒界や双晶境界という結晶の界面から割れが発生することがわかっており、この界面への合金元素の影響が割れの特性を決めていると考えられたからだ。

界面の原子モデル

研究グループは次に、この評価法を用いて、マグネシウムにおける合金元素の影響を占有率別に計算した。その結果、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、スズ(Sn)、鉛(Pb)では割れやすく、ジルコニウム(Zr)では割れにくくなることを予測。実際の合金と比較したところ、良好な相関が見られることも確認した。

評価法に基づく合金元素の割れへの影響

研究グループは、この成果により、合金開発にかかる時間やコストを大きく削減できるとともに、希少元素を用いない低コストな合金開発への応用が期待されるとしている。

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