冷却原子量子メモリを光ファイバー通信で動作――世界初となる長距離量子ネットワークの新技術の実証に成功

大阪大学は2018年5月24日、NTT物性科学基礎研究所、情報通信研究機構(NICT)、東京大学と共同で、量子メモリとなる冷却原子と光ファイバーネットワークにアクセス可能な通信波長帯光子との量子ネットワークの実証に世界で初めて成功したと発表した。

量子暗号は、量子コンピューターのような新しい計算機の出現に対してもセキュリティを確保できることが証明されている唯一の通信であり、この量子暗号を実現する量子ネットワークの長距離化には、効率的に量子状態を送受信するための中継器が必要とされている。現在のネットワークにおけるサーバーのような役割を持つ、この量子中継器は、量子状態を壊すことなく保存ができる量子メモリによって構成される。

しかし、これまで現在の光ファイバー通信のインフラに適合した通信波長帯(1550nm帯)の光量子メモリはほとんどなく、あっても十分な寿命を達成できるものではなかった。そこで、波長ギャップはあるものの寿命の長い冷却原子量子メモリに波長変換器を組み合わせることで、通信波長帯での利用を可能にする研究が盛んに行われるようになった。これまで開発してきた単一光子の波長変換器では、特定の偏光の光子しか波長変換できていなかったが、光子の偏光を量子状態として用いる場合には、任意の偏光の光子を波長変換できる「偏光無依存型波長変換器」が必要となる。

同研究グループは、単一光子の波長変換器を光干渉計と一体化させる新しいアイデアにより、光子の偏光状態を変えずに通信波長帯へ波長を変換する偏光無依存型波長変換器を実現し、冷却原子による量子メモリと光ファイバー通信波長帯の光子との間で量子ネットワークが形成されることを世界で初めて実証した。この新しい量子ネットワークを光ファイバーでつなげることで、遠く離れた原子メモリ間の量子ネットワークの形成や、それを利用した長距離セキュリティ通信への寄与が期待できるという。

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