NEDOら、細胞代謝物を高速/高感度に解析する技術を開発――スマートセルインダストリーの実現に貢献

前処理装置(ロボットアーム機構)

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、神戸大学、島津製作所は2018年5月25日、多種類の細胞代謝物を一斉かつ高感度に分析できる「高精度メタボローム解析システム」を開発したと発表した。

スマートセルとは、機能がデザインされ、またその発現が制御された生物細胞のことだ。このスマートセルによる、化学合成では生産が難しい有用物質の創製、または高機能物質を大量生産する技術の研究開発が進んでいる。

一方、スマートセルによる物質の大量生産には、生産量や収率を高める代謝経路を設計し、遺伝子を意図した通りに導入することが必要とされる。さらに、適切な代謝経路の設計には、細胞に含まれる代謝物の蓄積量を網羅的に測定するメタボローム解析により、得られる膨大なデータを高精度かつ高速に取得していくことが求められる。

今回開発した高精度メタボローム解析システムでは、前処理工程を自動化したうえで、代謝物150種類の一斉分析を実現。さらに、得られたデータの解析システムを構築することで作業時間の大幅な短縮に成功した。

前処理装置(外観)

前処理工程に対しては、代謝を瞬時に停止させるクエンチング手法を開発し、微生物の条件に応じて代謝物を抽出する分注/撹拌/遠心分離/相分画といった工程を連続的に行えるよう自動化した。これにより、従来は熟練者でも手作業では12サンプルについて2~3時間を要していた前処理工程を1時間に短縮した。

また、99種類が限界だった一斉分析を、トリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計を用いることで、約150種類に増加させた。正確性を損なう原因のイオンペア剤添加を回避する手法の開発も行い、既存の分析法と比較して10倍以上の高感度化も実現した。

高速液体クロマトグラフ質量分析計

さらに、膨大なデータ処理量による作業時間を、高速ピークピッキングシステムの開発により、1/4に短縮。また、マルチオミックス解析パッケージを組み合せることで、スマートセル設計に有用な情報を抽出しやすくなり、従来法で4日間要していた作業を1時間で完了できるようになった。

これにより、熟練者の手作業で行っていた前処理工程が自動化され、作業時間が半分以下になるという。また、同システムにより、細胞内で高機能物質を大量生産し、産業分野に生かすスマートセルインダストリーの実現に貢献できるとしている。

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