量子スピンアイス中の「創発的光」出現の痕跡を観察――沖縄科学技術大などが方法を提起

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量子スピンアイス上の理論的な中性子散乱を画像化。丸で囲まれている部分は、いわゆるピンチポイントで、中央が狭まった蝶ネクタイのような形をした特徴的な中性子反射の模様。

沖縄科学技術大学院大学は2018年6月6日、同大学のニック・シャノン教授らの研究グループが2012年に提起した、量子スピンアイス中の光を検知する方法による特徴的な痕跡を、スイスの研究者らが実験により観察することに成功したと発表した。

シャノン教授らの研究グループは、スピンアイスと呼ばれる特殊な磁性体に焦点を当て研究してきた。スピンアイスは、通常の磁石と異なり、磁気原子が整列しないにも関わらず、共同作用により原子レベルで変動するような磁場が形成される。また、部分の総和からは予測できない現象が現れることを「創発」と呼ぶが、近年、低温での量子効果によりスピンアイスに創発的な電場を導入することが可能であることが判明。さらに、創発的な電場と磁場が結合して磁気励起が起こり、それらが光の光子と全く同じように振る舞うことことも明らかになった。

シャノン教授らは2012年、結晶内の磁性原子から中性子を跳ね返すことで、量子スピンアイス中の光を検知する方法を提起した。さらに、結晶がどのように中性子のエネルギーを吸収し、量子スピンアイスにおける創発的電気力学の存在を示すかという特徴的な痕跡を予測している。しかし、実際の材料で創発的光の痕跡を見つけることは、不純物や欠陥のない結晶を用いて、50ミリケルビン(絶対零度から0.1度未満)の低温で作業する必要があり、非常に困難だった。

今回スイスのポール・シェラー研究所のロメイン・シビル博士の研究チームは、プラセオジム・ハフネイト(Pr2Hf2O7)と呼ばれる物質でこの痕跡の観察に成功したと報告した。特別に開発された中性子スペクトロメーターを使用し、鉄やコバルト、バナジウムによってコーティングされた960個ものスーパーミラーの隊列を使用することで、異なる種類の中性子を選択的に反射させることに成功。散乱された中性子のマッピングを通して散乱された粒子の偏光を測定することで、それらの粒子から生じたエネルギーの痕跡をマッピングすることに成功した。

実験で得られたエネルギー図(上図参照)は、シャノン教授らの理論と類似するものだった。エネルギー図には、量子スピンアイスの特徴となる、いわゆる「ピンチポイント」(蝶ネクタイの様に中心がくびれる構造)が見られたが、スピンアイスが低温で走査された際には、創発的光の出現を示唆するようにピンチポイントが消えたという。

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