東京工業大学、5G向けのミリ波無線機の小型化に成功 安価なシリコンCMOSで毎秒15Gbの無線伝送

5G向け28 GHz帯無線機チップの評価用基板(基板あたり8素子)

東京工業大学は2018年6月11日、第5世代移動通信システム(5G)向けのミリ波無線機の小型化に成功したと発表した。

2020年の実用化を目指す5Gでは、準ミリ波帯の26.5~29.5GHz(28GHz帯)の利用が検討されており、従来の100倍以上の毎秒10Gbのデータ伝送速度が目標とされている。現在大型無線装置による実証実験が行われているが、スマートフォンなどにも搭載できる小型かつ安価な無線機の開発が期待されている。

5Gでは、電波の利用効率を上げるために複数のアンテナを用いることで電波の放射方向を絞り込み、その放射方向を制御するビームフォーミング技術に対応したフェーズドアレイ無線機が必要になる。

ビームフォーミングを実現する方法の1つとして高周波帯で位相を制御する方式があるが、この方式は高精度の位相制御を実現するための移相器が必要になる。しかし、スマーフォンなどでの本格利用が可能なCMOS集積回路に組み込む際には、伝送速度や位相制御精度、回路面積がトレードオフ関係にあり、CMOS集積回路では5Gの目標である毎秒10Gbのデータ伝送速度の実現が困難だった。

今回の研究ではビームフォーミングに必要な移相器の小型化に成功。28GHz帯フェーズドアレイ無線機を65nmのシリコンCMOSプロセスで試作し、4×3mmの小面積に4系統のフェーズドアレイ無線機を搭載した。

試作したCMOSチップ2個を搭載した評価基板を用いて、室内5メートルの距離でデータ伝送実験を実施したところ、毎秒15Gbのデータ伝送に成功した。これは従来のCMOS集積回路による28GHz帯無線機によるものと比較して125倍の速度になるという。

今後はスマートフォンや基地局での利用を対象に2020年頃の実用化を目指す。同時に5Gでの活用が予想される39GHz帯や60/70GHz帯などの更なる高周波帯への対応や、自己診断機能、キャリブレーション機能の搭載を目指す。

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