東北大ら、ナノスケールでソフトマテリアルの3次元構造変化を観察できるTEM用試料ホルダーを開発

東北大学は2018年6月21日、メルビルと共同で、透過電子顕微鏡(TEM)内でソフトマテリアル(高分子ナノ複合材料)を大変形させながら、ナノスケールでの3次元構造変化を同視野で追跡できるTEM用試料ホルダーを開発したと発表した。同技術は従来の計算機実験の検証に役立つだけでなく、ソフトマテリアルの高機能化に不可欠な破壊メカニズムの解明に結びつくことが期待されるという。

ソフトマテリアルの引張り(延伸)や破壊挙動を明らかにするためには、ナノスケールでの微細な構造観察が可能なTEMを用い、試料に延伸を加えながら材料内の構造変化をリアルタイムに観察することが有効な方法と考えられる。しかし、試料の破壊までに観察されるひずみが、金属材料では数%から数十%程度であるのに対して、ソフトマテリアルでは数百%と10倍以上大きいことから、既存の観察システムをそのまま適用することは不可能であり、これまで延伸による構造変化は計算機実験などにより推測するしかなかった。

従来の引張りホルダーは、試料の片側を固定して反対側から延伸する方式だったため、延伸した距離だけ観察位置が延伸軸方向にずれてしまい、同じ視野での観察を続けることが困難だった。そこで、東北大学とメルビルらは共同で、試料ホルダーとカートリッジの両方のデザインを変更し、元の長さの40倍以上の延伸が可能な引張りホルダーを開発した。加えて、電子線の照射によるソフトマテリアルの硬化を回避するため、高感度CMOSカメラを搭載した電子顕微鏡を用いて最適な露光条件を探し、タイヤのトレッドゴムモデル材料を300%以上延伸した状態で3次元観察することに成功した。

今回の結果は、ナノスケールでのソフトマテリアルの変形や破壊メカニズムの解明に貢献するとともに、延伸途中の3次元像から得た知見や情報を計算機シミュレーションにフィードバックすることで、より正確な材料の性能予測が期待できるという。将来的には、このような基盤技術の蓄積により、材料開発のサイクルの劇的な加速が可能になるとしている。

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