JAXA、滞空型無人機とエミッションフリー航空機研究開発の事後評価を発表

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開発した電動推進システムとキー技術を統合化した実証機

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2018年7月2日、滞空型無人機とエミッションフリー航空機の研究開発に関する「次世代航空技術の研究開発」の事後評価を発表した。

滞空型無人機技術は、悪天候の影響を受けない高高度に長時間滞空して衛星や航空機の能力を補完/補強する、観測や通信のための新たなプラットフォームとして研究されている。2機のローテーション運用で、日本の排他的経済水域(EEZ)内の陸域/海域で昼夜や天候にかかわらず24時間/365日の連続ミッションを実現できるシステムを目指している。今回の研究では、システム/運用コンセプトの具体化とその社会的価値の明確化、および主要な技術要素の見通しの明確化を目標としている。

技術要素のうち、高高度滞空のための推進技術として、高空過給エンジンシステムの研究開発が行われている。レシプロエンジンに複数のターボチャージャーを組み合せた高空過給エンジンシステムについて、多軸ジェットエンジンのシミュレーション技術をもとに過給システムの動的シミュレーション・モデルを開発。広範な条件で安定作動が可能であることをシミュレーション解析によって確認した。

高空過給エンジンシステムの地上運転試験

加えて、国産の700ccガソリンエンジンHKS700Tをコアとする原型エンジンシステムを試作し、低圧環境を模擬した試験によりシミュレーション結果を検証した。今後の課題としては、実用エンジンに対するシミュレーション、および概念設計への取組みが必要となる。

また技術要素のうち、無人機運航技術については、非排他的空域における恒常的な運航(空域統合)を可能とするため、非常時対応など運航手順や方式を具体化。さらに、通信や操縦方式、航空交通管制への対応、衝突回避などの課題を識別し、飛行性や操縦性、着陸時の伝送遅延の影響などをシミュレーションにより確認した。

運航コンセプトと技術課題

一方、エミッションフリー航空機技術は、航空機の燃費や整備費を大幅に削減可能な電動化航空機技術を指す。研究開発では、電動推進システム技術など、国際的に優位性を持つキー技術の獲得を目指した。

電動推進システム技術では、高効率/高出力密度性能を備えた多重化モータを開発し、94%の効率と2kW/kg以上の出力密度を達成した。また高放電レート電池における健全性監視システムを開発し、放電レート11Cを達成。これらの数値はいずれも世界トップレベルだという。これらに加え、電動モータコイル用の高熱伝導性耐熱絶縁材も開発した。キー技術については、5件を特許出願し、うち4件が登録済みだ。

JAXA多重化モータと海外の電動航空機用モータの比較(2014年時点)

その他、多重化モータによる推力喪失回避機能の実証や、電力回生エアブレーキによる降下率調整機能の実証、電力回生しながら定高度に滞空する“Regenerative Soaring”の実証などを行った。

電力回生エアブレーキのコンセプト

今後JAXAでは、滞空型無人機技術については残された技術課題に対する技術成熟度向上に引き続き取り組む。またエミッションフリー航空機技術では、海外研究機関との連携による実機実証も含めた電動推進 システムの高度化とともに、化石燃料を必要としない電動ハイブリッドシステムの研究開発を実施する。外部機関とともに航空機の電動化に関するコンソーシアムも設立するという。

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