東大と岡山大、光励起による超高速原子変位の直接観測に成功――光メモリーなどへの応用に期待

室温における電子線回折法で観測した回折像(左)と低温で測定した回折像(右)

東京大学は2018年7月30日、岡山大学および独マックスプランク研究所と共同で、光照射直後に生じるこれまでにない超高速の原子変位の様子を、直接観測することに成功したと発表した。

通常、物質の原子間の結合は非常に強く堅いが、強い光照射や電場などによって壊れることがある。原子間の結合が壊れたり再生したりする過程を解明することは、物質の光や電場制御などの新機能の探索や、光や電場による破壊などの物性評価を行う上で非常に重要だと考えられている。しかし、原子のサイズは非常に小さいために動きが非常に高速で、原子間の結合の変化をリアルタイムで捉えることは、従来の方法では難しいとされてきた。

今回の研究では、レーザーによって作り出したパルス状の電子ビームを用いて変化する物質の回析像を捉え、ストロボ撮影できる時間分解電線回析法を用いて、特殊な原子結合と結晶構造をもつイリジウムダイテルライド(IrTe2)の結晶構造のダイナミクスを観測。他の物質群ではこれまで報告されたことがない約200フェムト秒(1フェムト秒=10-15秒)の超高速の原子位置変化(原子変位)が、光照射直後に生じる様子を直接観測することに成功した。

また、実験データを詳細に解析し、光励起によって特定のイリジウム電子軌道が直接変調されることで、イリジウム同士の強い結合による結晶構造が、超高速で崩壊/再構成することを明らかにした。同大学によると、このメカニズムの解明は世界初だという。

今回の研究結果は、光メモリーなどのデバイス開発につながる超高速スイッチングや原子結合の光制御などへの展開が期待されるという。

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