UCLA、SiCの3倍以上の熱伝導率を持つ半導体材料を開発

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のYongjie Hu助教授らの研究チームは、従来の3倍以上の熱伝導率を持つ新しい半導体材料を開発した。電子デバイスや光デバイスの性能やエネルギー効率の改善につながる可能性がある。研究結果は2018年7月5日付けの『Science』に掲載されている。

電子回路やプロセッサは、電子がその中を通ると熱を持つ。現在は何十億ものトランジスタが1つのチップに集積しており、プロセッサのサイズが縮小するにつれ、同じフットプリントでもより多くの熱が発生している。特に、熱が集中し温度が急上昇する「ホットスポット」ではプロセッサの速度が低下することが知られ、プロセッサを冷却するために多くのエネルギーが必要となっている。熱の管理は、CPUやLEDなどのデバイスの設計や性能に大きく影響を与えている。

研究チームは、熱伝導率の高い材料の設計・製作、予測モデリング、温度の精密測定法などの研究を重ね、欠陥のないヒ化ホウ素(BAs)の単結晶を開発した。室温の熱伝導率は1300W/mKと、シリコンカーバイド(SiC)や銅(Cu)など現在利用されている材料の3倍以上の熱伝導率を持つことを示した。独特の構造と熱的性質のおかげで、ホットスポットに集中するはずの熱はすぐに消え去ると考えられる。BAsが熱管理用のベンチマーク材料として確立したとしている。

また、固体中の熱輸送メカニズムについて、新しい物理的知見も明らかにした。欠陥のないBAs単結晶では、4フォノンプロセスを通じて、高次の非調和性が熱の輸送に重要な役割を果たしていることを示している。長年、固体中の熱輸送は3フォノンプロセスが支配的と考えられており、実際に多くの一般的な材料に当てはまっている。4フォノンと高次のプロセスの影響は無視できると考えられていたため、今回の結果はとても重要だ。

さらに、BAsの独特のバンド構造がフォノンの長い平均自由行程を可能にし、非常に高い熱伝導率のもととなっていることも示している。

Hu助教授は「この材料は、小型デバイスから最先端のコンピューターデータセンターまで、あらゆる電子機器類の性能を大幅に向上し、エネルギー消費を削減するのに役立つだろう。」と語り、「現在最新の半導体材料に取って代わり、エレクトロニクス業界に革命を起こす可能性がある。」と期待を込めた。

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