金属が半導体の特性を持つ――京都大学など、超薄膜の白金がトランジスタ特性を発揮することを発見

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今回の研究で用いた素子の構造図と実験の概念図

京都大学は2018年8月8日、同大学などによる研究グループが、金属である白金を極めて薄い膜(超薄膜)にすると、シリコンなどの半導体で実現されるトランジスタ特性(材料の抵抗を外部電圧で制御する特性)が現れることを発見したと発表した。さらに、それに伴って白金がスピンを電流に変換する「スピン軌道相互作用」を大幅に変調/制御できることも明らかにした。従来の「金属材料を使ってトランジスタを作ることはできない」「スピン軌道相互作用は材料固有である」という理解を覆す発見だ。

トランジスタは、半導体中のキャリア(電子または正孔)をゲート電圧で誘起することで抵抗の大きさを制御し、情報のオンとオフを操作する。半導体には一般的にシリコンが用いられており、金属はキャリアの数が非常に多いために、ゲート電圧によってキャリアを誘起しても抵抗を変えることは困難だ。そのため、金属を使ってトランジスタのように情報のオンとオフを操作することはできないと考えられてきた。

今回同研究グループは、イオン液体による強電界ゲート電圧の生成に着目。これを活用して多くのキャリアを金属に誘起し、かつ何らかの方法で金属材料のキャリアの数を相当に減らすことができれば、金属材料であっても金属の抵抗を変えることができ、半導体のような振る舞いをさせることが可能ではないかと考えた。また、抵抗を変えられればスピンの移動のしやすさも変えることができ、スピントロニクスで重要な相互作用である「スピン軌道相互作用」が制御できると予測した。

そこで実験では、まず2nmという極めて薄い白金(Pt)の膜を、磁性絶縁体であるイットリウム鉄ガーネット(YIG)の上に作製した。このPt超薄膜の上にイオン液体をのせて強いゲート電圧をかけたところ、Pt超薄膜の抵抗が最大で50%程度減ることがわかった。厚さ10nm以上の通常のPtでは抵抗の変化は観測されないため、超薄膜状態にすることがポイントだといえる。

さらに、基盤であるYIGから「スピン流」をPt超薄膜に注入した。その結果、スピン流を電流に変換する機能は最大で280%も変調できることがわかり、Ptがスピンを電流に変換する「スピン軌道相互作用」を大幅に変調/制御できることを見出した。

今回の研究は、トランジスタ特性としてはまだ既存の半導体より性能が低い。しかし、スピントロニクス分野では、スピン軌道相互作用の制御によって新しいタイプのメモリーやスピン素子の開発が可能になることが期待される。

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