ハーバード大、電力グリッド向けに新しい液体電池を開発

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安価で安全なキノン系有機分子を用いた、新しいレドックス・フロー電池

ハーバード大学の研究チームが、安価で安全なキノン系有機分子を用いた新しいレドックス・フロー電池(RFB:Redox Flow Battery)を開発した。現在RFBとして実用化されているバナジウム系よりも長時間の充放電サイクルを可能とするもので、研究チームは、この有機分子に旧約聖書に969年間生きたとされるMethuselar(メトシェラ)の名前を付けている。研究成果は、2018年7月23日の『Joule』誌にオンライン公開されている。

RFBは二次電池の一種だが、一般的な二次電池と異なり、1組2種類の電解液を用いている。2種類の電解液を別々のタンクから循環ポンプを使って電池スタックに流入し、多孔質メンブレンを通して酸化還元反応を起こすことで、充放電するものだ。他の二次電池が電極の化学変化で充放電するのに対し、RFBは電解液の酸化還元で充放電を行うためサイクル寿命が長く、長期間能力を維持することが可能だ。重量エネルギー密度が低く小型化できないという欠点はあるものの、構造が単純なため大型化が容易であり、気象条件に左右される太陽発電や風力発電によるエネルギーを、電力グリッドの中で長期間に渡り経済的に貯蔵するメガワット級の大型電池として期待されている。

研究チームによれば、現在実用化されているRFBは、高価で稀少なバナジウムを活物質としているため、広汎な展開には限界があるという。今回研究チームは、キノンの一種である有機分子アントラキノン(2,6-DHAQ)にカルボキシル官能基を付加した2,6-DBEAQを負極電解液に用いた。キノンは豊富かつ天然に存在するものであり、光合成や呼吸などの生物学的プロセスのキーとなっている物質で、高い水溶性を持ち中性に近い環境で作動させることができる。

このメトシェラと名付けられた分子を使った電解液と、フェロシアン化カリウム電解液の正極、および多孔質メンブレンを組み合わせた新型液体電池では、1サイクルあたりの容量低下が0.001%以下で、数万サイクルの充放電が可能だ。研究チームは、このメトシェラ系電池は商業化展開するのに必要なレベルを満たしているとし、「有機化合物の世界は広いので、より優れた化学系を探すことも可能だろう」と、さらなる高性能化の可能性にも言及している。

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Liquid Battery Based on Methuselah Molecule

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