湿度で熱伝導率が変わるバイオプロテインフィルム――高機能なスポーツウェアへの応用可能性

米ペンシルベニア州立大学は、イカの吸盤にある環歯(squid ring teeth)に着目した研究を行っている。同大学先端繊維技術研究センター所長で機械・エンジニアリング科学のMelik Demirel教授によれば、このイカ由来の生体材料の熱伝導度を、周囲の湿度に伴って飛躍的に変化させられるという。

研究者らは、環歯にみられるDNAのタンデム反復配列を応用したタンパク質を合成し、これに基づくバイオプロテインフィルムを開発した。この素材は、高湿度、水、汗などによって湿潤状態になると、熱伝導率が急激に上昇するという。そして湿潤状態での熱伝導率は反復数に線形に相関することから、素材自体に熱伝導率の値をプログラムすることが可能だ。Demirel教授は、「我々はこれによって、冷却、データ蓄積、エレクトロニクスおよび繊維など、現代技術における熱輸送の制御の問題を解決するサーマルスイッチを作ることができる」と述べている。

そしてこのバイオプロテインフィルムの有効な利用方法の一つとして、アスレチックウェアへの応用を考えている。すなわち、通常は極めて快適で心地よいが、激しい運動に伴う着用者の発汗によってサーマルスイッチがオンして熱伝導率が変化し、着用者の身体からの熱を発散させるような繊維ができる可能性がある。湿度が通常の周囲湿度以下になればスイッチはオフしてタンパク質の熱伝導率が低下、再び元の着心地に戻るという、機能性の高いアスレチックウェアが実現できることになる。

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Thermal switch discovered in engineered squid-based biomaterials

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