液漏れ/発火/破裂フリーで2倍長持ちする蓄電池の実現を目指して――室温で酸化物全固体リチウム電池用正極の作製に成功

豊橋技術科学大学は2018年9月6日、エアロゾル・デポジション(AD)法を用いてガーネット型酸化物固体電解質上にバナジウム酸リチウム(LVO)正極を常温で作製することに成功したと発表した。今回の成果は、高い安全性と化学的安定性を備えた酸化物全固体リチウム電池の実現に役立つとしている。

現行のリチウムイオン電池には燃えやすい電解液が使われており、電池内で異常が発生した際に破裂や発火を引き起こす原因となる。そのため、電解液の代わりに燃えない固体電解質(固体のリチウムイオン伝導体)を用いた全固体リチウムイオン電池が、高いエネルギー密度と高安全性/信頼性を同時に達成できる次世代型蓄電池として期待されている。

ガーネット型結晶構造を持つリチウム含有酸化物は、優れたイオン伝導特性と電気化学的安定性を示すことから、全固体電池用固体電解質の一つとして有望視されている。同材料の高密度化には一般に1000~1200℃での焼結が必要だが、電極材料と接合した際の副反応を防ぐにはこの温度は高すぎるため、これが一因となり、電極と固体電解質間の接合に有効な共焼結プロセスが使える電極材料は非常に限られていた。

そこで同大学の研究グループは、セラミックス粒子の常温下での衝撃固化現象を利用した成膜技術であるAD法に着目。AD法に適したLVO粉末の粒子サイズを詳細に検討し、ガーネット型固体電解質上にLVO膜(厚さ5-6 µm、相対密度約85%)を常温で固化することに成功した。

金属リチウムを負極として試作した全固体リチウム電池を100℃で動作した結果、現行リチウムイオン電池用正極の約1.5~2倍となる300mAh/gの高い充放電容量と良好なサイクル特性を確認した。同研究グループは、今回の結果はLVOが酸化物全固体電池用高容量正極として適用できる可能性を示すものである一方、電池性能の向上に向けては更なる研究が必要不可欠だとしている。

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