ナノサイズの単軸回転型分子ベアリングを発見――水素結合をリレーすることで単軸回転

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図1 単軸回転をする「ボウルと筒」の分子ベアリング。筒状分子(赤)の外枠に、水素原子(灰色球)が接触している。水素原子が炭素原子の筒の中で滑ることで、中央のボウル(青色)が回転した。

東京大学は2018年9月18日、ナノメートルサイズのボウル状分子が筒状分子の中で単軸回転(1つの軸を中心とした回転)することを発見したと発表した。この「ボウルと筒」からなる分子ベアリングは、「CH-π水素結合」という相互作用が10個関わることで自発的に組み上がる。

分子と分子が接触すると相互作用が生じて、接触した分子は動きにくくなる。特に水素結合などの方向性のある相互作用が複数存在する場合、このような運動抑制効果は顕著になると考えられていた。例えば、自然界では、タンパク質と小分子の間の複数の水素結合が、小分子の位置を固定する相互作用として機能していることがよく見られる。また、DNAの二重らせん構造も、2つのDNA鎖の間に水素結合があることで、お互いの位置が変わらないように固定化され、形づくられている。

今回、東京大学大学院理学系研究科の磯部寛之教授らの研究グループは、CH-π水素結合と呼ばれる新しい水素結合を活用して、ボウル状分子を筒状分子の中に捉えることに成功。ボウルと筒からなる直径1.7ナノメートルの新しい分子ベアリングを作成した。ボウル状分子はコランニュレンC20H10という分子で、筒状分子は同グループが独自に設計・合成したカーボンナノチューブの部分構造となる分子だ。

水素原子と炭素原子の接触点はCH-π水素結合でできている。CH-π水素結合は水素結合の中でも弱い相互作用だが、この結合が分子の間に10個存在するため、相互作用が加算され全体として大きな相互作用となり、ボウル状分子が筒状分子の中に強固に捉えられていた。

図2 量子化学計算により明かされた「ボウルと筒」の分子ベアリングの姿。ボウル状分子はCH-π水素結合により筒状分子の内部に捕らわれている。オレンジ色の線がCH-π水素結合を示し、青い玉は結合決定点(BCP)と呼ばれる水素結合を示す目印を表している。

さらに、結晶構造解析の結果、ボウル状分子が筒状分子内で回転している可能性があることが判明。そこで精密なスペクトル分析をしたところ、「ボウル状分子が筒状分子の中で回転しており、その回転はボウルの中心軸を中心とした単軸回転となっている」ことが分かった。つまり、ボウルが筒の中でクルクルと回るという新しい構造と運動性を持った分子ベアリングであることを実証した。

図3 結晶構造解析により明らかになった「ボウルと筒」の分子ベアリングの姿。斜め上から見た図(左)と横から見た図(右)。ボウル状分子は筒内で、異なる3つの配置で観察され、その場で回転していることが示唆された。

筒の中では、CH-π水素結合が次々に中継されることで、1つの軸周りの回転(単軸回転)のみが実現されている。さらに、この単軸回転は固体状態で存在していたことから、ナノサイズの分子では、多数の水素結合による固体内での束縛が存在する中でも、方向を制御しながら物体の高速回転が可能であることが示された。

今後は、CH-π水素結合を活用した新しい組み上げ方法をさらに展開・活用することで、様々な構造と運動性を持った分子機械の開発が期待されるという。また、筒状分子はカーボンナノチューブの部分構造であることから、今回の発見により、カーボンナノチューブ内の物質の運動・挙動の理解がより深まるとしている。

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