光渦を照射するだけで螺旋ポリマーファイバーを自己組織的に創成――千葉大が発見

(a)右巻きの螺旋波面を持つ光渦により形成されたポリマーファイバー (b) 左巻きの螺旋波面を持つ 光渦により形成されたポリマーファイバー光渦の巻く方向を変えることによりポリマーファイバーの巻く方向が制御可能

千葉大学は2018年10月5日、光渦を紫外硬化樹脂に照射するだけで「螺旋ポリマーファイバー」を自己組織的に創成できることを発見したと発表した。

光渦という特殊なレーザー光を、金属・半導体・アゾポリマー薄膜などの物質に照射すると、物質表面がキラルな螺旋構造に変化することは知られていた。しかし、こうした変化が起きるのは固体-気体などの界面に限られ、物質の内部を螺旋構造に変形させることは不可能だった。

今回の研究では、光を照射すると液体から固体に硬化する光硬化性樹脂を用意。そこに405nmの光渦レーザーを照射することで、硬化する過程において光渦の角運動量が作用し、螺旋状にねじれながらポリマーファイバーができることを世界で初めて実証した。

光渦の角運動量が物質の表面だけではなく、内部にも作用すると示したことになる。また、物質表面の変形という単なる物理現象ではなく、角運動量が光重合という化学反応にも作用することを示した世界初の研究成果になるとも説明している。

現在のところ、得られたファイバーの長さはおよそ140μm。原理上はmmやcmの単位にまで長くできる可能性があるという。さらに、光渦の軌道角運動量の符号を反転させることで、ファイバーの螺旋のねじれ方向、キラリティーを変化させることも可能だと報告している。

今後は目的に合わせて、照射する光渦の波長や光硬化性樹脂の種類を最適化することで、長尺の螺旋ポリマーファイバーを容易に形成できるようになると見込んでいる。螺旋ポリマーファイバーは、光渦モードを安定に空間伝播できるファイバーとして、大容量空間多重光通信や超解像レーザー顕微鏡用のための伝送用ファイバー、光渦レーザーやDNAシミュレーターなどにも幅広く応用できると期待されている。

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