水の電気分解を加速する新触媒を開発――水素の効率的な工業生産を目指す

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水の電気分解を加速する新触媒のコンセプトを示す研究チーム。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームが、水の電気分解を加速する、経済的かつ安定で実用性の高い新触媒を開発した。従来のイリジウム酸化物やルテニウム酸化物よりも多孔質な触媒であるパイロクロア型複合酸化物の製造方法を考案したものだ。この触媒により、現在の工業的水準よりも高い速度で水を分解することができ、持続可能なエネルギーとして水素を効率的に製造できると期待される。研究成果は、2018年8月30日の『Angewandte Chemie』誌に報告されている。

水の電気分解によって水素を製造するには、酸素と水素の結合を分断する必要があるが、これを工業的に安定して実行することは容易ではない。現在最も効率的な装置は、腐食性のある酸性電解液と、イリジウム酸化物かルテニウム酸化物から作られる電極を用いるものだが、イリジウムは地球上で最も稀少な元素の1つであり、代替できる触媒材料が求められている。

化学生物分子工学科のHong Yang教授は「多孔質構造は化学反応を活性化するので、電極触媒として優れている」とする一方、「多孔質材料の製造方法としては、ナノメータ・サイズの粉末テンプレート法などが知られているが、これらは高品質な固体触媒の製造プロセスに必要な高温条件に耐えることはできない」と、解決すべき課題を説明する。

研究チームは、1種類のみの金属酸化物ではなく、2種類の金属酸化物による複合的なパイロクロア型酸化物に着目した。パイロクロア型酸化物は、超電導を示すことからポスト・ペロブスカイトとして注目されているが、結晶中に酸素欠陥が規則的に配列する多孔質化による高活性触媒の可能性も期待されている。

研究チームは、イットリウムとルテニウムを用い、様々な触媒と加熱条件によって、パイロクロア型酸化物の生成を試みた。その結果、過塩素酸を触媒とし高温で反応させると、新しい結晶構造を持ったルテン酸イットリウムのパイロクロア酸化物が得られた。この新しい材料の構造を電子顕微鏡で観察したところ、これまでのルテン酸イットリウムよりも4倍、また工業的なイリジウム酸化物やルテニウム酸化物より3倍も多孔質であることを見出した。

さらに研究チームは、酸素発生反応における性能指標である触媒回転数が、ルテニウム酸化物よりも約100倍高いとし、現在の工業水準よりも速く水を分解できることを示した。この触媒は高効率かつ資源的に豊富な原料から製造可能であり、酸性環境でも安定である。将来的な持続可能なエネルギーとして、水素を効率的に製造する触媒として期待される。

研究チームの次の目標は、詳細研究用のラボスケール装置を制作し、酸性環境における多孔質電極の安定性をさらに向上させることだと、Yang教授は語っている。

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