MIT、グラフェンを使って希少半導体を量産する「遠隔エピタキシー法」を開発

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MITを中心とする研究チームが、稀少で高価な高性能材料の半導体フィルムを、コピー機のように量産できる手法を考案した。ガリウム砒素(GaAs)や窒化ガリウム(GaN)等のウェハーの表面に、2次元グラフェン・シートを挟んで、薄膜フィルムをエピタキシー成長させるというもので、結晶構造を繰り返しコピーして半導体フィルムを量産するとともに、高価なウェハーを再利用し続けることができる。最新の研究成果が、2018年10月8日の『Nature Materials』誌に報告されている。

シリコン(Si)材料は、半導体材料として理論的に最良とは言えないものの、地球上で2番目に豊富な元素であり、安価で汎用性が高いことから、多くの電子デバイスに用いられている。一方で、性能的にSiを凌駕するGaAsおよびGaN、フッ化リチウム(LiF)等は、稀少で高価であることから、汎用的なデバイスへの採用は限定的になっている。

研究チームは、このような稀少で高価な高性能材料から構成される半導体フィルムを、効率的かつ経済的に作製する技術を考案した。GaAs等の高純度ウェハーの上に、厚さ1原子層の薄い2次元グラフェン・シートを積層し、その積層の上にGaとAsの原子流を供給すると、GaAsの薄膜フィルムをエピタキシー成長させることができることを見出した。GaとAsの原子は、中間のグラフェンがあたかも透明かのように、ウェハー結晶原子と相互作用を起こすことができる。その結果、エピタキシー成長したフィルムは、ウェハーと同一の原子構造に配列することができる。また、薄膜フィルムは、グラフェン層から簡単に剥離することができるので、数十から数百nmの極薄で柔軟な半導体フィルムを作製することができる。

研究チームが「遠隔エピタキシー法」と呼ぶこの技術は、1つのウェハーから多数の薄膜フィルムを繰返し再生産することができる。「たった1つの高価なウェハーを買えば、それを何度も何度もコピーでき、ウェハーも再利用し続けることができる。材料の貸し出し図書館のようなもの」と、MIT機械材料科学工学科のJeehwan Kim准教授は語る。

さらに、研究チームは、遠隔エピタキシー法に必要な条件として、ウェハー結晶がイオン結合していること、逆に中間2次元シートの構成原子は極性を持たないことが重要であることを見出した。即ち、SiやGeのような中性的なウェハー結晶では遠隔エピタキシーは生じず、また、グラフェンと同じ原子配列を持っていても極性のある六方晶窒化ボロンhBNを中間シートとした場合も実現しない。そして、強いイオン結合性を持つLiFウェハーでは、遠隔エピタキシー効果が更に大きく、グラフェンが3層積層されていてもエピタキシー成長できるという。

Kim准教授は、「Si以外の多くの稀少高価材料から構成される、柔軟なデバイスを作製する道を切り開いた」とし、柔軟な太陽電池やウェアラブルなコンピュータやセンサーなど、安価で高性能なデバイス作成への応用を期待している。

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Study opens route to flexible electronics made from exotic materials

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