-196℃で超電導、高温超電導線材の超電導接合を持つ永久電流NMR――理化研など

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

高温超電導線材の超電導接合を持つNMR装置用コイル(左)と永久電流磁場・NMR信号(右)

科学技術振興機構(JST)は2018年11月2日、従来の低温超電導線材ではなく、高温超電導線材同士の超電導接合を持つ永久電流核磁気共鳴(NMR)装置を用いて、NMR信号の取得に成功したと発表した。理化学研究所、住友電気工業、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー、JEOL RESONANCE、JSTの研究者らがつくる研究チームによる成果となる。

NMR装置は、磁力中に置かれた原子核の核スピンの共鳴現象によって、物質の分子構造や物性を解析する装置だ。NMR装置や核磁気共鳴画像(MRI)装置には、電磁石として超電導コイルが使われている。超電導コイルは、線材同士を超電導接合することで回路全体にわたって電気抵抗ゼロのループを生み出している。ここに電流を流すことで、外部からの電力供給がなくても半永久的に電流が流れる永久電流運転を実現できる。

このコイルを超電導状態となる極低温に維持すれば、磁場を出し続けることができる。ただし市販中のNMR/MRI装置のコイルには、-269℃の液体ヘリウム温度レベルで超電導になる金属系低温超電導線材が使われており、冷却のために高価な液体ヘリウムと大掛かりな低温設備が必要になっている。

一方、レアアース系やビスマス系の高温超電導線材には、-196℃の液体窒素温度で超電導になるという利点がある。さらに-269℃にまで冷やせば、低温超電導線材よりはるかに高い磁場を発生できるため、次世代超高磁場NMRを実現する技術として有望視されている。

理化学研究所などがつくる研究チームは、2017年にレアアース系の高温超電導線材同士を使って、優れた磁場中通電特性を示す超電導接合手法「iGS接合」を開発した。しかし接合サンプルや小さな試験コイルとしての原理検証レベルにとどまり、実際のNMR装置への実装は技術的なハードルが高く、これまで実現できていなかった。

研究チームは今回、レアアース系高温超電導線材1本で巻いた小型のNMR用内層コイルを製作。コイルから引き出した薄いテープ形状の線材を構造物の障害にならないように引き回し、また、コイルから漏れてくる磁場が接合部の電気抵抗ゼロ特性に悪影響を与えないような接合部の最適な位置を導き出した。

その上で、線材の両端部を同じ線材で製作した永久電流スイッチの両端部と熱処理によって超電導接合することで、永久電流運転を可能にした。

このコイルを低温超電導線材でつくる外層コイルの内側に設置し、外部電源から電流を流したところ、内層コイルの磁場は4MHz、外層コイルの磁場は396MHzとなり、合計400MHzの磁場を発生できた。

開発した永久電流NMR装置の外観(左)、コイルの模式図と内層コイルの外観(右)

その後、永久電流スイッチを動作させて外部電源を切り離し、永久電流運転を開始。2日間にわたって磁場の変動を計測したところ、1時間当たり10億分の1レベルという安定度が得られた。さらに磁場の空間均一度を向上させて、NMR信号の取得に成功した。

磁場の経時変動

今回開発した永久電流NMR技術を発展させることで、医薬品検査に用いられる定量NMRなどに応用可能な小型で汎用性の高い永久電流のNMR装置の開発が可能になる。

また、これまで以上の高磁場を発生できるNMR装置の永久電流運転が期待できることから、アルツハイマー病などの神経変性疾患の要因とされるアミロイドβペプチドの構造情報の取得技術が飛躍的に進展するなど、創薬や医療への展開も見込むことができると説明している。

関連リンク

プレスリリース

関連記事

fabcross
meitec
next
ページ上部へ戻る