富士通のCMOSミリ波信号源回路、時速100kmで対向する車両の検知を可能に

富士通研究所は2016年10月13日、76~81GHzの広帯域にわたって高速で周波数を変調できるCMOSミリ波信号源回路を、先進運転支援システム(ADAS)搭載車両などの車載レーダー向けに開発したと発表した。同回路を実装したミリ波レーダーは、速度が異なるターゲットを誤検知せず、時速100kmで対向する車両(相対速度時速200kmの車両)を検知できる。

従来のミリ波レーダーは、ミリ波信号の周波数の速度を周期的に変調させるFMCW方式が主流だった。だが同方式では、歩行者と自転車など速度の異なるターゲットが近接すると、片方を見落としてしまう。そこで近年、変調速度を高めることで距離分解能や対象物の速度の検知範囲を広げられるFCM方式の採用により、このような誤検知を防ぐ試みが進められている。

とはいえ、車載レーダーに用いる回路は150度以上の環境での正常動作が要求される。ミリ波信号の周波数を制御する信号源回路は、ミリ波信号のパルスを常時読み込んでカウントし、カウント数に応じた電圧を周波数制御部に印加して周波数を変調する。だが従来のCMOS信号源回路では、温度上昇に伴い内部信号が遅延してカウント数を誤るため、変調速度を高められなかった。そのため、検知可能な相対速度は時速50km程度が限界だった。

そこで、富士通研究所はミリ波CMOSの設計技術を駆使して、信号源回路の中でカウント動作に大きく影響を及ぼすブロックを特定。温度変化による遅延を補正する機能を同ブロックに搭載し、高温下でも正確に動作する時間補完型パルスカウンター回路を新たに開発した。

このパルスカウンター回路は、150度の高温環境でもパルス読み込みのタイミングを整えられる。さらに、80GHzにおいて1μs当たり2GHzとなる世界最高速度でミリ波信号の周波数を変調できる。そのため、速度の異なるターゲットの見落としを防げるばかりか、ミリ波レーダーの最大検知相対速度を時速200kmに拡大させられる。

富士通研究所は今回、ミリ波信号の位相を1度以内の精度で計測・制御してミリ波信号のビームを任意の方向へ照射できる4チャンネルCMOS送信回路も開発。開発した2つの回路を組み合わせれば、10m圏内を5cm間隔といったように周囲の高精度スキャンが可能になるため、高速走行と周辺監視の両方に対応した車載レーダーの実現が期待できる。

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