ハイドロゲルのマイクロマシン「iMEMS」を開発――生体内で安全稼働、10%の投薬量で十分な効果

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コロンビア大学工学部の研究チームが、生体内に安全にインプラントできるマイクロサイズのデバイスを製作する手法を開発した。

生体適合性のあるハイドロゲルを層状に積層することで、生体内を自由に動ける3次元構造デバイスを迅速に製作できたという。研究チームは今回作製したデバイスを、「iMEMS(implantable micro electro mechanical systems)」と呼んでいる。

現状、インプラント可能なマイクロデバイスの多くは、バッテリや他の毒性のある電子部品が必要になり、生体適合性に限界がある。研究チームはこの問題を解決するために8年以上研究し、生体適合性に限界のあるシリコンや毒性のあるバッテリを使用せず、小さなロボットを駆動する方法を考えてきた。

研究チームが着目したのはハイドロゲルの活用だ。ハイドロゲルとは、3次元状の網目構造を持つ高分子が水を含んで膨らんだ物質の総称。豆腐や寒天などもこの仲間だ。1gの高分子で約1000gの水を吸収できる紙オムツのほか、コンタクトレンズなどにも用いられている。特に最近では、再生医療への関心が高まり医療用材料として注目を集めている。

生体医工学者であるSam Sia教授の研究チームは今回、ハイドロゲルのユニークな機械的性質に着目。生体内で動くデバイスの駆動と運動のために必要な「ロック機構」を開発した。これにより、バルブ、マニフォールド、ローター、ポンプ、そしてドラッグデリバリーなどの動作を可能にした。また、ハイドロゲルの透過性についても研究し、投薬がハイドロゲルの層間を簡単に透過・流出しないようにした。

ハイドロゲルの活用には課題があった。ハイドロゲルは軟らか過ぎて、通常の機械加工技術による加工が難しいのだ。しかし、研究チームはハイドロゲルのシートを光により高分子化し、1層ごとに形状を作りこんで3次元構造化しようと試みた。シートの高分子化を光照射で処理したため、複雑な構造を30分以内で作り上げることに成功した。

論文の筆頭著者であるSau Yin Chin氏は、「デバイスの中で互いに接触する構造の剛性を、必要レベルに適合させるのに注意を払った。構造内で互いに噛み合うギアは、力の伝達を可能にし、駆動の繰り返しに耐えるため、剛性を維持しなければならない。そのため、ハイドロゲルの機械的性質を制御し、デバイス構造の剛性を確保した」と語っている。

iMEMSのギアを駆動する方法としては、インプラント後、何週間も追加の薬を放出できるようにするため、外部磁場と磁性鉄粉を使う方法を採用した。磁性鉄粉はすでに造影剤などとして人体に使われている。FDA(アメリカ食品医薬品局)も承認済みだ。研究チームはこのように、毒性のあるバッテリを使わずに、インプラントされたデバイスの制御を可能にした。

研究チームはiMEMSの性能を確かめるために、コロンビア大学医学センターと共同で、骨ガンを持つマウスを用いたドラッグデリバリーシステムの試験を実施。その結果、デバイスから10日間以上にわたって抗がん剤が放出され、従来の化学療法において標準的な投薬量と比べて、10分の1ほどの量でも高い処置効果を確認。毒性を低く抑えることができた。

Sia教授は今回の研究成果について、「iMEMSはドラッグデリバリー以外にも、カテーテルや心臓のペースメーカーなどの比較的大きなシステムやソフトロボットなどに使える。ワイヤレスで制御できるインプラント可能なセンサやロボットの作製への活用も可能だ。iMEMSをさらに一歩進めれば、人体や他の生体とシステムと安全に相互作用するミニチュアのソフトロボットに発展させられる」としている。

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