理研、化学的なクモの糸を作り出す手法を確立——従来不可能だった大量生産が可能に

理化学研究所(理研)は2017年1月19日、高強度を示すクモ糸タンパク質のアミノ酸配列に類似した一次構造を持つポリペプチドを化学的に合成する手法を開発し、合成したポリペプチドがクモの糸に似た二次構造を持つことを明らかにしたと発表した。

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ものによるが、クモの糸(牽引糸)は鉄に匹敵する高強度を示す素材だ。引張強度は~1.6GPa、ヤング率は~10GPaに上る。軽量ながら強靭、その上しなやかであり、自動車用パーツなど構造材料としての応用が期待されている。

しかし、クモは共食いする生物なので、家蚕のように飼育できない。そのため、天然のクモの糸を大量生産することは困難だった。にもかかわらず、一部の高コストな微生物合成法を除くと、人工的にクモ糸タンパク質を大量・簡便に合成する手法は確立されていなかった。

研究チームは今回、化学酵素重合を取り入れた2段階の化学合成的手法を用い、アミノ酸エステルを材料として、クモ糸タンパク質のアミノ酸配列に類似したマルチブロックポリペプチドの合成に成功。また、X線散乱実験による構造解析により、合成したマルチブロックポリペプチドがクモ糸タンパク質と類似した二次構造を構築していることを明らかにした。

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理化学研究所によると、今回確立した合成手法を用いると、微生物合成法よりも低コストで、大量のポリペプチド材料を製造できるという。この手法で得られた材料は、石油由来の高強度材料の代替品として、持続可能社会の実現に大きく貢献することが期待できる。

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